インドネシアが生んだ最高のSSWの一人、アディティア・ソフィアン新作
インドネシアが生んだ最高のSSWの一人、アディティア・ソフィアンの通算4作目『シルヴァー・ペインティッド・レイディエンス』は、穏やかなメロディはそのままに、よりその音楽性を押し広げた傑作。アコースティックでオーガニックな質感と、リズム楽器を取り入れつつ、よりジャジーなフィーリングも醸し出す極上のメロウポップが詰まっています。
インドネシアの首都ジャカルタ在住の男性SSW、アディティア・ソフィアン。2008年に自身のベッドルームで吹き込んだ珠玉の弾き語りアコースティック・ポップの名曲達を収録したデビュー作『クワイエット・ダウン』と、2ndアルバム『フォーゲット・ユア・プランズ』の小ヒットにより来日公演も果たし、多彩な楽器とアレンジで音楽性を広げたサード・アルバム『ハウ・トゥ・ストップ・タイム』も素晴らしかった彼の、3年振りとなる通算4枚目のアルバム『シルヴァー・ペインティッド・レイディエンス』が完成しました。
基本的なサウンドは、前作までと同様で、アコースティックな質感を大切にしつつ、彼の素朴でジワジワを染み込むような歌声と、優しく穏やかなメロディが心地よいオーガニックでナチュラルなサウンドです。が、前作までとの決定的な違いは、大半の曲にリズムセクションが使われていることでしょう。アディティア自身が述べているように、“バンド的なサウンドに兆戦”した1枚なのです。とは言うものの、添えられるドラムや、美しく響くピアノはあくまでも彼の本質である歌心を活かす為のもの。まるで往年の名SSWかのような雰囲気を醸し出す本作の魅力は、やはりそのメロディや歌心、そしてそれらが生み出す大きな感動にあります。
緩やかなアコギのフレーズとともに幕を開ける「01. Find who you are」はまさに、アディティア節とでも言うべき極上のアコースティック・ポップ。中盤から添えられるドラムスの響きが新鮮で感動的。美しいピアノの響きとアコースティックギターの音色が溶け合う「09. Silver painted radiance」や、歯切れ良いテンポに乗せて歌心が早足で駆け抜けるような「02. Our constellation」などで聴けるジャジーなアプローチも興味深いですが、終盤にかけてドラマチックに高揚して行く感動のロック「08. Starting this feeling」、「03. Home away from home」が本作のハイライトではないかと。過去作では中々感じ取ることが出来なかった、アディティア・ソフィアンと言うSSWの普遍の才能のようなものが垣間みれます。もちろん、彼らしく音数が少なめの「04. Agony of defeat」や、「06. Places」などの静かな楽曲が添えられる本作は、アルバムとしての世界観もまた素晴らしいのですが。
彼の音楽には派手さは無いですし、ある意味どこまでも普遍のサウンドは地味とも思えます。ただ、それ故に彼の歌声の唯一無二の魅力や、メロディセンスが際立つのもの事実。ここには何の誤摩化しもありません。ただただ、素晴らしい歌心が詰まっていると言うことだと思います。
A式紙ジャケット仕様
解説:河津継人(Afterglow / RePublik)
タグ : UK/US INDIE
掲載: 2016年05月10日 11:00