ピーター・ブロデリック、運命に身を任せて作られた珠玉のピアノ・アルバム
ポスト・クラシカルやアンビエントからフォークやインディー・ロックまで、予測不能の道を歩みつづける米ポートランドの作曲家/シンガー・ソングライター、ピーター・ブロデリック。映画やダンス作品のための数々のスコアをはじめとする精力的なソロ活動の他、ニルス・フラームをはじめとする幾多のアーティストとのコラボレーション、そしてエフタークラングのサポートなどで名を馳せながら、積み上げてきた10年の輝かしいキャリア。
2015年には初のバンド・アルバム『Colours Of The Night』を発表し驚かせてくれましたが、新たなスタジオ・アルバム『Partners』もまた驚きに満ちた作品となりました。ジョン・ケージの「In A Landscape」をピアノで演奏し、研究していたときに得たインスピレーション。それはケージによる「偶然性の音楽」に着想された、自分自身の音楽から自己を取り除き、自動化した作曲プロセスをとるという試みでした。
ケージの考案したチャンス・オペレーションを活用して、「IN A LANDSCAPE」ということばの一文字ごとに詩を書き、2つのサイコロを振って、出た目の数だけの詩を読むということ。出た目は5。それぞれの詩に数字を割り当て、さらにサイコロを振って詩を5つ、サイコロの目の順番に読んだものが本作の1曲目であり、アルバムのタイトル・トラックでもある「Partners」(最後に選んだ詩の最後の単語でもあるそう)です。
「Under The Bridge」は彼がはじめてつくった「偶然性の音楽」。別々の楽譜に番号をふり、サイコロを振り、出た目の楽譜を順番に演奏したコンセプト作です。他には本作のきっかけとなったジョン・ケージの「In A Landscape」のカバー、ベルリン在住時に書いたヴォーカル・ループとピアノによる儚い名曲「Carried」、2010年のミニ・アルバム『How They Are』のセッション時の作品を元にした「Conspiraling」、2010年のオランダでのアーティスト・イン・レジデンスの際に作曲した「Up Niek Mountain」が収録されています。さらにアルバムのラストを飾る美しいピアノ弾き語り「Sometimes」は、彼がプロデュースするアイルランドの女性シンガー・ソングライター、ブリジッド・メイ・パワーのカバー。
2007年のソロ・デビュー作『Docile』は素朴で愛らしいソロ・ピアノ作品でしたが、9年ぶりとなるこのピアノ・アルバムは、若手作曲家のホープがついに円熟期に入ったことを証明する圧巻の内容です。また彼にとってもっともスペシャルな試みは、ミックスやマスタリングされた音源、つまり完成作を彼自身が聴かないということ。「たぶんいつか、いまから5年か10年経って、たまたま入ったカフェで食事中のBGMとしてこの作品がかかっていて、そこではじめて聴くことを想像すると楽しいね」。
2016年9月には本作をひっさげて来日ツアーをおこないます。
国内流通盤のみボーナストラック1曲収録。
【Peter Broderick Japan Tour 2016“Partners”】
2016年9月23日(金)福岡 papparayray
2016年9月24日(土)京都 元・立誠小学校
2016年9月25日(日)名古屋 valentinedrive
2016年9月26日(月)岡山 蔭凉寺
2016年9月28日(水)東京 ルーテル市ヶ谷ホール
2016年9月29日(木)東京 Fluss
掲載: 2016年07月15日 20:53