いま旬の演出家ドミトリー・チェルニャコフを迎えたバレンボイムの新たな“パルシファル”[映像作品]
ベルリン、シラー劇場で上演された新制作の「パルジファル」。演出は最近急激に注目を集めているドミトリー・チェルニャコフで、しばしば過激な読み替えを行うため、今回のパルジファルも上演前から期待と不安が交錯していたという舞台でした。簡素な舞台と現代的な衣装(パルジファルはリュックを背負って現れる)などは想定内ですが、何よりチェルニャコフが重視したのは「復讐」の感情で、様々な宗教観が渾然一体となった中世の叙事詩が、見事に現代人の不安と救済の物語に置き換えられているのはさすがと言うほかありません。そのため、多少難解な舞台になっていますが、バレンボイムの音楽はいつものように清澄で神聖さを備えており、ワーグナー(1813-1883)が望んだ世界が完全に具現化されています。ベテラン、ルネ・パーペを中心に、日本にも来日経験のあるテノール、アンドレアス・シャーガーら若手歌手を起用。フレッシュな歌唱にも注目です。
(ナクソス・ジャパン)
バレンボイムが指揮する“パルシファル”を最初に音楽ファンに知らしめたのは、1989年から1990年にかけてベルリン・フィルと行なったレコーディングでしょう。この時の主役3人はイェルザレム、ファン・ダム、マイアーという豪華な顔ぶれ。映像の方の最初は、1992年にベルリン・シュターツオーパーの音楽監督に就任した際の新制作によるもので、演出監督はハリー・クプファーでした。歌手陣はエルミング、シュトルックマン、マイアー。就任後2度目の新制作は2004-5年のシーズン。演出はベルント・アイヒンガーで、かなりの不評を買ったようです。本作に収録されているのは音楽監督就任後、実に3度目の新制作ということで、いかにベルリンでバレンボイムの振る“パルシファル”が人気を得ているかの最良の証明でしょう。
歌手陣は、今や最高のヘルデン・テノールの一人と目されているアンドレアス・シャーガー、ティーレマンの指揮でもお馴染みの演技派ウォルフガング・コッホ、イゾルデ役で鳴らしている美声のアニャ・カンペと、望みうる最高の顔ぶれと言っても過言ではないはずです。ルネ・パーペの完全無欠なグルネマンツ役にも脱帽。
チェルニャコフの舞台は期待どおりもの。現代衣装でリュックを背負ったパルシファルの、まるで敗残兵のような登場ぶりから印象的です。スクリーンに聖杯を映し出すなど、らしいテクニックが満載ですが、意表を突いたラストシーンの演出には思わず泣けてしまうかも。
(タワーレコード)
【収録曲目】
ワーグナー
舞台神聖祝典劇“パルジファル”(全3幕)
【演奏】
アンフォルタス:ヴォルフガンク・コッホ(バリトン)
グルネマンツ:ルネ・パーペ(バス)
パルジファル:アンドレアス・シャーガー(テノール)
クリングゾル:トーマス・トマソン(魔法使い)
クンドリー:アニャ・カンペ(メゾ・ソプラノ)
ティトゥレル:マティアス・ヘッレ(バス)
ダニエル・バレンボイム(指揮)
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
シュターツオーパー合唱団
シュターツオーパー・コンツェルト合唱団
【演出】
ドミトリー・チェルニャコフ(演出)
エレナ・ザイツェーヴァ(衣装)
ドミトリー・チェルニアコフ(装置)
グレフ・フィルシュティンスキー(照明)
マーティン・ライト(合唱指揮)
イェンス・シュロート(ドラマトゥルギー)
【収録】
2015年4月、ベルリン・シュターツオーパー、シラー劇場
[DVD]
収録時間:252分
音声:ステレオ2.0/DD5.1
字幕:英語、ドイツ語、フランス語、韓国語
画面:16:9
REGION All(Code:0)
片面ニ層ディスク×2
[Blu-ray]
収録時間:252分
音声:ステレオ2.0/DTS HD master Audio5.1
字幕:英語、ドイツ語、フランス語、韓国語
画面:16:9
REGION free
片面二層ディスク50GB 1080i High Definition
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2016年08月21日 16:56