真のデス・メタル・バンド、イモレイションの10枚目のアルバム『アトーンメント』
イモレイションはアメリカのデス・メタル・バンドである。これは単純に彼らがニューヨーク出身の、デス・メタルにカテゴライズされる音楽をプレイしているバンドである、ということだけではない。彼らは実にアメリカらしい、そしてデス・メタルとしか形容しようがないスタイルを貫いているバンドなのだ。
86年はスラッシュ・メタル最盛の年で、この時期から活動していたイモレイションは、デス・メタル・バンドとして第一世代も第一世代、パイオニアの一つと言える存在なのである。Rigor Mortis名義で数本のデモをリリースした後、88年4月にイモレイションに改名。91年にリリースされたデビュー・アルバム『Dawn of Possession』は、発売25周年を迎えた今もアメリカン・デス・メタルの金字塔として崇められている名盤である。
そして10枚目となるスタジオ・アルバム『アトーンメント』が前作から約4年ぶり、満を持してリリースだ。Nuclear Blast Recordsに移籍して3枚目となる今回も、イモレイションのポリシーにブレは無い。冒頭にも書いた通り、彼らはデス・メタルとしか形容しようのないスタイルを、30年に渡り貫いている。調性感の薄い不気味なリフ・ワークが持ち味のイモレイションだが、アルバムを再生した途端、すぐに最高品質のイモレイション・ワールドが飛び出してくる。すべての楽曲がひたすらヘヴィにテクニカルに、そして邪悪に畳み掛けてくるが、印象的なリフ・ワークや練られた構成により決して単調にならず、それぞれの曲の個性が際立っているというのもイモレイションの強みだ。
レコーディングされたのはニューヨークのMillbrook Sound Studios、プロデューサーはPar Olofssonと、イモレイションのおなじみの布陣で製作された本作であるが、音質の点で大きな改善が見られる。前作のドラムのサウンドがあまりに機械的であったという反省を生かし、「音を詰め込み過ぎず、オーバープロデュースでない生きたサウンド」を求めたというだけあって、激烈でありながらも非常に聞きやすいサウンドに仕上がっている。そのオーガニックな響きが、人間の闇や腐敗、破滅への欲望という暗いテーマと相まって、唯一無二の世界観を作り出すのに成功しているのだ。
『アトーンメント』は、30年間デス・メタルに身を捧げてきた本物のデス・メタル・バンドによる、真のデス・メタルだ。エクストリーム・メタルを愛するならば、避けては通れない作品である。
日本語解説書封入/歌詞対訳付き
タグ : ハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)
掲載: 2017年03月07日 17:59