トヌー・ナイソー・トリオ(Tonu Naissoo Trio)が贈る、最高のトリオ・ミュージック
類まれなる作品。TONU NAISSOO の新作を初めて聴いたあと、素直にそう感じた。このアルバムには明確なテーマがある。タイトルの示す通り、それは1967年だ。TONUさん(と、どうしても呼んでしまう)にとっての音楽的原点になった年であり、そして、カウンター・カルチャーの世界が大きく動いた一年間、それが西暦1967年だった。
サマー・オブ・ラブ、ヒッピー・ムーヴメントが沸き起こり、社会に、芸術に、大きく影響する。もちろん、音楽も例外ではなかった。若い力で世の中が変えられるかも知れない…そんな予感と熱が特別な音楽を生み出した。エストニアという、当時はソヴィエトの支配下にあった場所からそれを感じるとするなら、TONUさんの憧れは一層強かったに違いない。そこから始めた自らの歩みを跡付けるように、チョイスされたナンバーたち。シーンの中心だったサンフランシスコ(Tr.02)ではシスコ・ロックが生まれ、反体制ミュージカル「ヘアー」(Tr.06)が上演され、ジミ・ヘンドリクスが登場する(Tr.08)。創造力の頂点に達したビートルズがアルバムSgt.Pepper’s Lonely Hearts Club Band(Tr.07)を送り出し、ストーンズ(Tr.09)さえもフラワーな響きを奏で、我らがマイルスのクインテット(Tr.10)は円熟の極みを描いた。
それから50年、未だノスタルジーとは呼べない想いが我々を捉えて離さない。それは記憶の一点ではなく、現在から更に先へと延びる道程の基点だからだ。TONUさんのトリオは愛おしむように最高の素材をCookして心に火を灯してくれる。間違いなく永く愛聴に耐える素晴らしいCD。是非お手元に置いて戴きたい。
Text by 北見 柊
Tonu Naissoo Trio『1967』
SONG LIST:
01. Up, Up and Away
02. San Francisco
03. Kind of Folk Waltz
04. Super C
05. The Look of Love
06. Aquarius
07. She’s Leaving Home
08. Purple Haze
09. Ruby Tuesday
10. The Sorcerer
Rec: September. 2017
Tonu Naissoo - piano
Taavo Remmel - bass
Ahto Abner - drums
タグ : ジャズ・ピアノ
掲載: 2017年11月17日 17:14