ヴィオラ奏者アントワーヌ・タメスティ!絶美の弱音から叫び声までイェルク・ヴィトマンを弾く!
当代きってのヴィオラ奏者、アントワーヌ・タメスティ。難関ミュンヘン音楽コンクールで優勝、世界のトップクラスのヴィオラ奏者として活躍しているほか、今井信子氏とヴィオラ・スペースを共宰するなど、日本でもその名は広くしられるところです。ハルモニアムンディからの第1弾リリースとなる「ベル・カント~ヴィオラの声」(HMM902277/ KKC5761)は非常に高く評価されました。マントヴァーニの2つのヴィオラのための協奏曲をタベア・ツィンマーマンとの共演で初演するなど、その活躍の場とレパートリーはとどまるところを知りません。今回は、同じくこの時代を牽引する存在の作曲家にしてクラリネット奏者、ヴィトマンの作品集で登場。
ヴィオラ協奏曲は、タメスティに捧げられた作品。concerto という単語はラテン語で戦い、競争、あるいは論争を意味し、ヴィトマンも、このラテン語から創造をスタート。基本的にヴィオラはオーケストラと相対する存在として扱われています。ステージ上でも、通常ソリストは指揮台の横に立ちますが、ヴィトマンはソリストをオーケストラの中に立たせます。しかも最初はソリストが楽器の指板やあごあてを叩いたりする音から始まります(この音が非常に美しく響くことに、まず驚かされます)。次第に打楽器が加わり、対話(口論?)となり、タメスティとオーケストラの一歩もゆずらぬ駆け引きで緊張感に満ちた第1 楽章、静謐な世界の中でヴィオラが美しい低音を奏でる第2楽章、第3楽章の終盤ではタメスティのシャウトを合図にクライマックスを迎えます。超絶技巧の第4楽章、そして「アリア」と題された終楽章(第5楽章)では、ヴィオラが美しくも悲しい旋律を奏で、最後は息絶えるように永遠に下降するかのようなグリッサンドで曲が閉じられます。
24のデュオはもともとはヴァイオリンとチェロのためのデュオですが、ここではタメスティが、ヴィオラと、ヴァイオリンまたはチェロのためにアレンジして演奏。HMNシリーズでも登場した気鋭の奏者と共演しています。
狩の四重奏は、名門シグナム四重奏団による演奏です。1楽章構成で、威勢のよい掛け声に始まり、古典派の狩の音楽を思い起こさせるように始まったかと思わせて、すぐにそれは不協和音や特殊奏法による音色で崩壊しかけますが、また古典派風に戻る、を繰り返す楽しい楽曲です。
ヴィトマンの作風の幅広さと、タメスティの美音を堪能できる1枚です。
《イェルク・ヴィトマン》
世界的クラリネット奏者にして、世界的作曲家、そして指揮者でもある、音楽界を牽引する存在。ヨーロッパのオーケストラで彼の作品を取り上げていないところはないともいわれるほど、作曲家としてポピュラーな存在です。また、クラリネット奏者として数多の指揮者、オーケストラと共演を重ねているほか、その作品は、バレンボイム、ハーディング、ケント・ナガノ、ティーレマン、ラトル、ヤンソンスらもしばしば取り上げています。2018年1月にはクラリネット奏者として来日があり、その技量に聴衆は驚嘆しました。
(キングインターナショナル)
【曲目】
イェルク・ヴィトマン(b.1973):
1.ヴィオラ協奏曲(2015年)~アントワーヌ・タメスティに捧げる(世界初録音)
2.24のデュオより~ヴァイオリンとチェロのための(アントワーヌ・タメスティによるヴィオラとヴァイオリンまたはチェロのデュオ編曲)
第9番 Calmo ( 静かに)*
第14番 Capriccio ( おどけて)*
第15番 Canto ( 歌)*
第16番 機械仕掛けの小バレエ (パ・ド・ドゥ)**
第12番 カノン-断章**/第5番 Frage (問い)**
第6番 スケルツァンド (ウン・ポコ・ソステヌート)**
第21番 バイエルンのワルツ*
第22番 ラメント
3.狩の四重奏
【演奏】
アントワーヌ・タメスティ(ヴィオラ)[1672年製ストラディヴァリウス「マーラー」]
ダニエル・ハーディング(指揮)[1]
バイエルン放送交響楽団[1]
マルク・ブシュコフ(Vn)[2]*
ブリュノ・フィリップ(Vc)[2]**
シグナム四重奏団〔フロリアン・ドンデレル(Vn)、アンエット・ワルター(Vn)、シャンディ・ファン・ディーク(Vla)、トーマス・シューミッツ(Vc)〕[3]
【録音】
2016年3月3-4日、ミュンヘン、ヘルクレスザール(協奏曲)
2017年10月22&30日、テルデックス・スタジオ、ベルリン(デュオ、弦楽四重奏)
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2018年01月26日 00:00