ダブリー(Dabrye)、00年代歴史的重要作『One/Three』がリマスター復刻
本作『One/Three』は2001年はGhostly InternationalからリリースされたTadd MullinixことDabryeのファースト・アルバムにして、三部作の第一章(先日12年ぶりの新作にして最終章の『Three/Three』がリリースされたばかり)。
DabryeはTaddのヒップホップのワイルドスタイルであり、自身がインスパイアされた穏やかなヴァイブスのミッドウェスタン・ヒップホップとイーストコーストのブーム・バップ、UMMAH期のJay Dee(J・ディラ)のフューチャリスティック・ファンク、そしてデトロイトのダンス・ミュージックの計算された繊細さの魅惑的なコラージュである。
『One/Three』には明らかなヒップホップの曲はない。しかし、その代わりに、90年代のヒップホップ・インストゥルメンタルの独創的なミニマリズムを取り入れ、鋭いリズムと暖かく弾力のあるベースラインに満ちた、しなやかに激しく陽と陰を横断するメランコリックなトラックを構築する。冒頭の「The Lish」ではデジタル的に断片化されたメロディに艶かしいサックスを絡め、「How Many Times (With This)」で小気味良いギターのエッジで引き込み、「The Smoking The Edge」のつっかえるようなリズミカルなビートでにニヤリとさせられる。彼の音楽はインストゥルメンタルであるが、想像的な韻のためにダウンビートを挿入し、ブレイクダウンのためにラガ・ジャングルの複雑さを取り入れている。しかし、『One/Three』で本当に定義しているのは、Mullinixが熱心に学んだデトロイトのヒップホップ・プロダクションのリズミカルなセンスとメトリック・モジュレーション(リズムの転調)であり、ビートは常に固定されたテンポのグリッドを回避しているように感じられるが、実際はかなりタイトだ。
結果『One/Three』はデトロイトのヒップホップ・グループ、スラム・ヴィレッジのスムーズ且つ無骨なヒップホップ・サウンドを好むリスナーとSchematicのようなレーベルからリリースされていたアメリカ独特のIDMリスナーの双方のファンから支持を受けた非常に希有な作品である。そして彼は当時頭角を現したPrefuse 73と並び、新世代の騎手として注目されることとなったのだ。
そして本作は今日において、J・ディラとフライング・ロータスを繋ぐ、インストゥルメンタル・ヒップホップのひとつの教科書のようなものとなっている。
今回のリイシューにあたり、LOW END THEORYの、またレーベルALPHA PUPの主宰者であり、フライング・ロータスなど、様々なアーティストのマスタリングを手がけて来た辣腕エンジニア、Daddy Kevがマスタリングを施し、ソリッド且つマッシヴに、楽曲に新たな息吹をもたらしている。また、今回の再発のボーナス・トラックとしてOutputmessageとPrefuse 73のリミックスを含む『Payback EP』の計3曲がボーナス・トラックとして追加収録。全エレクトロニック・ミュージック・リスナー必聴の重要作。
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掲載: 2018年03月07日 11:52