オーティス・レディング(Otis Redding)最後のレコーディング・セッション『Dock of the Bay Sessions』
そのハスキーな声質とパワー満点のヴォーカル・スタイルで数多くのヴォーカリストに影響を与える、「キング・オブ・ソウル」オーティス・レディング。活動期間はわずか5年、1967年12月の飛行機事故により26歳の若さでこの世を去ったこの不世出のアーティストが遺したサウンドは、人種、性別、国を超えて今もなお世界中の音楽ファンを魅了し続けている。
1967年6月に行われたモンターレー・ポップ・フェスティヴァルで、彼は多くの白人オーディエンスに唯一無比のブラック・エンタテインメントを披露、肌の色や人種、国境などを超えたファンを獲得し一気にその人気は急上昇していった。大成功となったそのフェスティヴァルでのパフォーマンスを終えた彼はメンフィスに戻り、より自分の音楽性を広く羽ばたかせるべく次なるアルバムのレコーディングをスタートさせたのだが、このタイミングで彼を悲劇が襲う。コンサートへの出演するため彼が搭乗したウィスコンシン州行の飛行機が墜落、この事故により67年12月10日、彼はこの世を去ってしまったのだ。
その最後のレコーディング・セッションより彼の死後発表されたシングル「ドック・オブ・ザ・ベイ」は彼にとって初の全米No. 1シングルとなった(音楽史において、死後発表した作品が1位を記録するのは彼のシングルが初となった)。数多くのアーティストのカヴァーされ、時代/世代を超えて今もなお愛され続ける楽曲だ。
同楽曲が全米No. 1を獲得した1968年から50年という時を経た今、彼の死の直前にレコーディングされた絶世の作品の全貌を明らかにする作品、「ドック・オブ・ザ・ベイ・セッションズ」がリリースされることとなった。ここに収録されている楽曲は、彼の死後数々発表されたコンピレーション・アルバムや企画アルバムなどに収録されていたのだが、彼が意図していたであろうアルバムという形で1枚の作品として編集されるのは、今回が初となるのだ。
今作はACE RECORDSのRoger Armstrong、そしてオーティスの自伝の著者でもあるJonathan Gouldからの情報や意見を元にコンパイルされており、オーティスの家族からのお墨付きも得たアルバムだ。ライナーノーツを執筆したミュージシャン/ジャーナリスト、Bob Stanleyはこう記している。
「このアルバムは、ヨーロッパの観客を魅了し、モンターレー・ポップ・フェスティヴァルで全く新しいファンを獲得したオーティス・レディングというアーティストが進んだであろう新たな方向性を指し示す作品だ」
名曲「(Sittin' On) The Dock Of The Bay」で幕を開けるこの作品には、ファンク色の強い「Hard To Handle」や、美しい歌詞の中に彼が敬愛したボブ・ディランの影を見つけることができる「Gone Again」、彼のルーツでもあるゴスペルへの思いを強く感じるインプレッションズのヒット曲「Amen」、Al Jackson Jr.のビートとメンフィス・ホーンが奏でるリズミックなブラストがたまらないダンス曲「Love Man」や、妻が書いたポエムを元に歌詞を書いたという、聴く者の胸を打つ美しいバラード曲「I've Got Dreams To Remember」など、数々の名曲が収録されている。