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ヨナス・カウフマンの新作はコロナの影響で自宅で録音した歌曲集『至福のとき』ピアノはヘルムート・ドイチュ

ヨナス・カウフマン

コロナの衝撃に世界が曝された日々の中で、世界一のテノール歌手が紡ぎだした宝石のような27編の歌心。

「Selige Stunde 至福のとき」と題されたヨナス・カウフマンの最新アルバムもまた、コロナに翻弄されたアーティストの内面から生み出されたものです。

ドイツ歌曲を中心に、27編のロマンティックな歌曲を収録したもので、アルバム・タイトルはツェムリンスキーの同名の歌曲からとられています。このアルバムが録音されたのは2020年4月半ば。世界中がコロナ・ウィルスの脅威にさらされ、音楽家たちもコンサートを開催できず“ステイ・ホーム”を余儀なくされていた時期です。しかしカウフマンは「良いことは悪いことから生じる!」と信じ、主要歌劇場での新演出上演やコンサートツアーに時間をとられる多忙なスケジュールの中で棚上げになっていたこの録音を敢行。

録音自体はコロナの影響を受け、ウィーン在住のドイチュのドイツへの入国が危ぶまれながらも何とか国境を通過することが出来、さらに予定していた録音スタジオが閉鎖されたことで急遽ミュンヘン郊外のカウフマンの自宅に録音場所を移して敢行されました。自宅という暖かくこぢんまりとした空間がかえってこれらの歌曲の親密さにはぴったりで、まるでホームコンサートでカウフマンに接しているような身近な感覚が伝わってくる録音に仕上がっています。

オペラ歌手としての華やかなキャリアが強調されがちなカウフマンですが、デビュー・ソロ・アルバムがR.シュトラウスの歌曲集だったことからもわかるように、歌曲は彼にとってデビュー以来オペラ活動と並行して継続してきた重要な音楽活動の柱の一つです。歌曲におけるパートナーは当初から変わらず、ミュンヘン音楽大学での師であった名手ドイチュがつとめ、相互の深い共感に支えられた音楽的な関係から生み出される緻密な音楽づくりはまさにテキストと音楽が高度に結びついたミニアチュールといえる歌曲には理想的。近年ではシューベルト「冬の旅」やヴォルフ「イタリア歌曲集」で、ますます円熟を極めつつあるカウフマンならではの歌曲の世界を開拓しています。

今回のアルバム「至福のとき」でも、どの曲も短いながらも、愛、憧れ、平和、別れがテーマとして選ばれており、カウフマンは曲の性格を際立たせながら、一曲一曲を丁寧に歌い上げています。カウフマンの歌声は、極めて親密な味わいを持つとともに、全ての人々に心の平穏をもたらすことでしょう。
(ソニーミュージック)

『至福のとき』
【曲目】
1. シューベルト:ミューズの子 D.764
2. ベートーヴェン:アデライーデ Op.46
3. ベートーヴェン:君を愛す WoO.123
4. ジルヒャー:ターラウのエンヒェン
5. メンデルスゾーン:歌の翼に Op.34-2
6. グリーグ:君を愛す
7. リスト:それは素晴らしいこと S.314
8. シューマン:献呈 Op.25-1
9. シューベルト:泉のほとりの若者D.300
10. カール・ボーム:夜のごとく静かに
11. R.シュトラウス:献呈 Op.10-1
12. ツェムリンスキー:至福のとき Op.10-2
13. アロイス・メリヒャル:別れの曲(ショパンの「別れの曲」による)
14. ヴォルフ:秘めた愛
15. ドヴォルザーク:我が母の教えたまいし歌 Op.55-4
16. R.シュトラウス:万霊節 Op.10-8
17. ブラームス:谷の底では(谷川の流れ)WoO.33-6
18. チャイコフスキー:ただ憧れを知る人だけが
19. モーツァルト:すみれ K.476
20. モーツァルト:春への憧れ K.596
21. メンデルスゾーン:挨拶 Op.19a-5
22. シューベルト:ます D.550
23. シューマン:月夜 Op.39-5
24. ブラームス:子守歌 Op.49-4
25. シューベルト:さすらい人の夜の歌 II D.768
26. ヴォルフ:隠棲
27. マーラー:私はこの世に捨てられて

【演奏】
ヨナス・カウフマン(テノール)
ヘルムート・ドイチュ(ピアノ)

【録音】
2020年4月16-19日、ドイツ、ヘルシング・アム・アマーゼー

カテゴリ : ニューリリース

掲載: 2020年08月04日 00:00