バレストラッチ、コルシ、ウイヨン~C.P.E.バッハ&J.C.バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバと鍵盤のためのソナタ
大バッハの息子世代とガンバや鍵盤の関係を、楽器の響きから問い直す
カフェ・ツィマーマンやレ・バッス・レユニなどフランス最前線の古楽器グループとの共演でも知られる一方、ソリストとして抜群の技量と深い音楽史的洞察に満ちた解釈を聴かせるイタリアのヴィオラ・ダ・ガンバ奏者グイード・バレストラッチ。
近年では共鳴弦を多く備えた弦楽器バリトンを用いてのハイドン作品集、作曲家が指定した珍しい楽器アルペジョーネによるシューベルトのソナタ録音など古典派以降の作品の録音でも注目されましたが、今回は18世紀半ばに活躍した大バッハの息子たちでも特に重要な二人に光を当てます。
次男カール・フィリップ・エマヌエル・バッハが長く仕えたフリードリヒ大王の宮廷と、末男ヨハン・クリスティアン・バッハの活躍の場となったロンドンは、どちらも18世紀には例外的にガンバの名手がいたことと、最新発明のピアノを含む鍵盤楽器に高い関心を寄せる音楽愛好家がいたことで共通しており、両作曲家ともこれら二つの楽器を使った二重奏ソナタを残している点は見逃せません。
忘れられつつあったガンバと最新のピアノを前に、多感主義の旗手エマヌエルとギャラント様式の立役者クリスティアンが紡いだ音世界の奥深さを隈なく引き出す克明な解釈の意義をさらに高めているのが、入念に選ばれた楽器の組み合わせ。鍵盤はグランドピアノ型よりも先に定着したスクエアピアノと古典派時代に製作されたモデルのチェンバロを使用し、特にチェンバロにも通じるクリスピーな美音を聴かせる1786年製ブロードウッドのオリジナル楽器による録音例は稀少。
モーツァルトの登場を準備した世代がいかに貴重で魅力あふれる音世界を味わっていたか、改めて深く実感できる一枚です。
(ナクソス・ジャパン)
『技巧と装飾 ~C.P.E.バッハとJ.C.バッハによるヴィオラ・ダ・ガンバと鍵盤のためのソナタ』
【曲目】
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714-1788):
1-3. ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ ハ長調 Wq 136/H 558(1745)
ヨハン・クリスティアン・バッハ(1735-1782):
4-5. 鍵盤とヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ ト長調 Warb B 4b(1770頃)
C.P.E.バッハ:
6-8. ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のためのソナタ ニ長調 Wq 137/H 559(1746)
J.C.バッハ:
9-10. 鍵盤とヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ ヘ長調 Warb B 6b(1770頃)
C.P.E.バッハ:
11-13. ヴィオラ・ダ・ガンバと鍵盤のためのソナタ ト短調 Wq 88/H 510(1759)
J.C.バッハ:
14-15.ヴィオラ・ダ・ガンバを伴う鍵盤のためのソナタ 変ロ長調 Warb B 2b(1770頃)
J.C.バッハ:
16-17. ピアノのためのソナタ へ長調、ヴィオラ・ダ・ガンバ助奏付き Warb B 15b(1770頃)
【演奏】
グイード・バレストラッチ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
・使用楽器1: パリのギヨーム・バルべ(18世紀に活躍)の7弦モデルに基づくスー(フランス南西部ローヌ地方)のシャルル・リシェ2015年製作の再現楽器[1-3、6-8、11-13]
・使用楽器2: ハンブルクのヨアヒム・ティールケ1696年製作の7弦モデルに基づくミラノのピエール・ボール2006年製作の再現楽器[4-5、9-10、14-15、16-17]
パオロ・コルシ(スクエアピアノ、チェンバロ)
・使用楽器1〔スクエアピアノ〕: ロンドンのジョン・ブロードウッド1786年製作のオリジナル楽器[4-5、9-10]
・使用楽器2〔スクエアピアノ〕: イタリア北部の逸名製作家による1795年頃製作のオリジナル楽器[1-3、11-13、16-17]
・使用楽器3〔チェンバロ〕: パリのパスカル・タスカン1769年製作モデルによるダンズ・テュー(英国中南部オックスフォードシャー州)のデイヴィッド・ルビオ1971年製作の再現楽器[6-8、14-15]
ステファニー・ウイヨン(ヴィオラ・ダ・ガンバ〔通奏低音〕)
・使用楽器: ハンブルクのヨアヒム・ティールケ1696年製作の7弦モデルに基づくミラノのピエール・ボール2006年製作の再現楽器 [1-3、6-8]
【録音】
2022年7月11-14日 聖ペトロ教会、ヴァブル(フランス中南部オーヴェルニュ地方)
収録時間: 76分
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2023年03月22日 00:00