アンドレアス・ショル、ヴァーレク&チェコ・アンサンブル・バロック/フランティシェク・トゥーマ:モテット集
アンドレアス・ショルのゆるぎなき美しい声
トゥーマの珠玉のモテット
チェコに生まれたトゥーマ(1704-1774)は、18世紀中頃のウィーンの最重要人物の一人。特に宗教作品で高く評価されており、オルガンの通奏低音を伴う合唱から、器楽伴奏による合唱と独唱まで、ともに対位法の高度な技術を用いて作曲しました。18世紀後半の作曲家(ハイドンやモーツァルト)が典礼のための音楽を書く際のモデルとなりました。
トゥーマはカントールでオルガン奏者だった父のもとに4 人兄弟の長男として生まれ、プラハの教会でもテノール歌手を務める傍ら、テオルボやヴィオラ・ダ・ガンバの演奏にも非常に長け、1723 年、カール6 世の戴冠式がプラハで行われた折にも演奏したとされています。カール6 世の妻エリザベス・クリスティーナの宮廷で寵愛を受けた後、その作風は当時としては古風なものの仲間入りをし始めていましたが、クリスティーナの娘マリア・テレジアにも大切にされ、手厚い年金を受け取るなどよい境遇を過ごし、最後は僧籍に入り、教会で亡くなりました。
このディスクには、エリザベス・クリスティーナの宮廷に仕えていた頃の作品が収められています。15 名ほどの器楽奏者と5 名の歌手たちのアンサンブルによる編成のものを多く書いておりました。当時の最高レベルの歌手たちがトゥーマのもとには集っていたと考えられ、技巧的なパッセージも見られます。また器楽作品も多く残しており、三楽章による弦楽四重奏曲は古典派時代の到来を思わせます。後期バロックの円熟した対位法技法と、新時代の表現の両方が合わさった、トゥーマの魅力を存分に味わうことができます。モテットでは、アンドレアス・ショルのビロードのような音色、音域、見事なテクニックが、トゥーマの男性アルト・ソロのヴィルトゥオーゾ的要求に完璧に応えています。
アンドレアス・ショルとチェコ・アンサンブル・バロックのコラボレーションは、ヘンデルのオラトリオ『サウル』のチェコ初演にショルが参加したことをきっかけに始まりました。カウンターテナー独唱によるトゥーマのモテットの演奏は世界初録音となります。
(キングインターナショナル)
【曲目】
フランティシェク・トゥーマ(1704-1774):
・S.ジョアンヌ・バプティスタのモテット(1743)
・モテトゥム・デ・テンポーレ(1750)
・四声のシンフォニア
・Motetto per ogni Tempo(1746)
・Dixit Dominus(1743)
【演奏】
アンドレアス・ショル(カウンターテナー)
ロマーナ・クルシコヴァー(ソプラノ)
オンドレイ・ホルブ(テノール)
イルジー・ミロスラフ・プロハスカ(バス)
チェコ・アンサンブル・バロック
ロマン・ヴァーレク(指揮)
【録音】
2023年6月2-6日、サン=ミシェル教会、チェコ
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2023年12月06日 00:00