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レナー弦楽四重奏団/1924年ラッパ吹込み ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14&15番を100年の時を経てCD化!

ベートーヴェン

レナー弦楽四重奏団初期のベートーヴェン録音を100年の時を経てCD化!

 

ヴァイオリンとヴィオラはフバイの弟子、チェロはポッパーの弟子、全員がハンガリー国立歌劇場(かつてマーラーが音楽監督を務めたこともある)の団員というメンバーによって1918年に結成されたレナー弦楽四重奏団。1922年にウィグモア・ホールでのロンドン・デビューで成功を収めると英コロンビアにスカウトされ、史上初めてベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集を録音して、その素晴らしい世界をレコードを通して世界に伝えることとなります。ここでは、その嚆矢となった1924年録音の第14番と第15番を復刻。記念すべき録音でありながら、アコースティック録音(いわゆるラッパ吹込み)だったため、後にマイクを使った電気録音方式で再録音されるとさしかえられてしまい、忘却されがちだったものです。
レナー弦楽四重奏団は、1年先輩で同様のメンバーで構成されたブダペスト弦楽四重奏団とライバル視されました。4人の奏者が対等な表現を行い、厳格なアプローチを見せる傾向にあったブダペストSQに対して、レナーSQは第1ヴァイオリンが牽引し、ロマンティックかつドラマティックな表現をする傾向にあり、この録音でそれがうかがわれます。100年前の録音ながらノイズはSP復刻としてはかなり抑えられている一方、楽器の質感は良好で、復刻に使った原盤の状態が良かったものと推測されます。
Biddulphの解説書の常連タリー・ポッターによる解説(英文のみ)では、レナーのベートーヴェン録音がオルダス・ハクスリーやヴァージニア・ウルフに及ぼした影響にも考察が及んでおり、ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲の受容史の上でも興味深い読み物となっています。
(ナクソス・ジャパン)

【曲目】
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827):
1-7. 弦楽四重奏曲第14番 嬰ハ短調 Op. 131
8-12. 弦楽四重奏曲第15番 イ短調 Op. 132

【演奏】
レナー弦楽四重奏団
イェネー・レーネル(第1ヴァイオリン)
ヨージェフ・スミロヴィッツ(第2ヴァイオリン)
シャーンドル・ロート(ヴィオラ)
イムレ・ハルトマン(チェロ)

【録音】
1-7
録音:1924年2月11、 21、21日&8月25日
初出:Columbia L 1581/1585 (AX 300-302, 323-328 & 332)
8-12
録音:1924年11月20&21日
初出:Columbia L 1672/1676 (AX 745-754)

復刻プロデューサー:Eric Wen
復刻エンジニア&マスタリング:Rick Torres

総収録時間:83分

レナー弦楽四重奏団

レナー弦楽四重奏団
第一次世界大戦が終結すると、当時の状況から逃れようと決意したブダペスト歌劇場の4人の奏者は、弦楽四重奏曲の楽譜をトランクに詰めて田舎の村へと旅立ちました。彼らは、独自のスタイルと音色、アンサンブルと洞察力、個性と卓越性を備えた四重奏団へと発展するために、猛練習と猛勉強を重ねました。こうしてレナー弦楽四重奏団は1919年にブダペストでデビューします。1920年のウィーン・デビューは絶賛され、演奏を聴いていたモーリス・ラヴェルからパリに招かれ、パリでも大成功を収めました。1922年にはイタリアへツアーしたあとイギリスで公演を行い、一躍ロンドンの人気者となりました。彼らの人気に目をつけたイギリス・コロムビア社は、同年11月13日、ラッパ吹込みでハイドンのセレナード(現在は偽作とされる)をSPの片面盤に録音。これが彼らのデビュー盤となりました。

ロンドンの聴衆、特にウィグモア・ホールの人気者となった彼らは、解散する1939年までほぼ毎年ロンドンを訪れ、演奏会を開くとともにレコーディングも行いました。その間、1925年にはマンチェスターでベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を6晩にわたって演奏し、1927年にはベートーヴェン没後100年を記念してクイーンズホールでも演奏しました。1930年頃からはブッシュ弦楽四重奏団やブダペスト弦楽四重奏団といったライヴァルが出現し、とくに愛好家の間でのブッシュの人気はレナーを凌ぐほどとなりましたが、レコードの分野での人気はレナーが一番でした。1935年には室内楽のSPレコードとしては破格の通算売上100万枚を達成し、コロムビア社からリーダーのレナーにゴールド・ディスクが贈られました。

レナー弦楽四重奏団は1929年に北米ツアーを行いましたが、そこでは評価さませんでした。1939年、四重奏団を解散した後、リーダーのレナーは渡米。そこで新しい四重奏団を始めましたが、それは成功せず、1946年で活動の終止符を打ちました。この頃になるとレナーのロマンティックなスタイルは時代遅れとみなされました。レナーはハンガリーの名教師フーバイの弟子であり、幅広いヴィブラートを特長としていました。このことはレナー弦楽四重奏団の演奏を聴けば明らかですが、それは彼らの暖かい音の秘密でもあり、グローブ音楽辞典は「豊かでまろやかな音色と4つの楽器の驚くほど均質なブレンドが組み合わされている」と評したほどでした。彼らの特徴であるポルタメント奏法(音のずり上げ、ずり下げ)の使用は演奏される作曲家によって異なり、モーツァルトやベートーヴェンでは比較的控えめでした。

ここには電気録音になる以前、1924年のラッパ吹込み(アコースティック録音)によりレナー弦楽四重奏団のベートーヴェンの弦楽四重奏曲が収録されているのが貴重です。これまでは、電気録音による再録音(全集録音に発展)がCD復刻で聴かれていましたが、更に初期の彼らのスタイルが聴けるということで、ヒストリカル・ファンにとっては必携の1枚と言えるでしょう。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)

カテゴリ : ニューリリース | タグ : BEETHOVEN 2020

掲載: 2023年12月21日 18:00