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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.285

ケニー・ホイーラー『ヌー・ハイ』(1976)

KW

ケニー・ホイーラー(flgh)
キース・ジャレット(p)
デイヴ・ホランド(b)
ジャック・ディジョネット(ds)

1975年6月ニューヨーク、ジェネレーション・サウンド・スタジオにて録音

曲目:
01.ヘイオーク
02.スマター
03.ヌー組曲

【アルバム紹介】
1.トランペッター、フリューゲルホーン・プレイヤーであるケニー・ホイーラーの70年代の傑作
2.数多くリーダー作を残すECMレーベルでの第一作
3.ピアノにはキース・ジャレット他、この上なく豪華なメンバー

2024年はECMレーベル創設55周年、今回ご紹介するのは、トランペッター、フリューゲルホーン・プレイヤーであるケニー・ホイーラーの70年代の傑作です。

ケニー・ホイーラーは1930年、カナダのトロントに生まれ、12歳の時にコルネットをプレイし、10代の半ばにはジャズに興味を持つようになりました。
1950年からトロントの音楽学校で、作曲を学び、1952年にイギリスに移住し、そこを活動の拠点として活躍しました。
その後、徐々にフリー・ミュージックへと傾倒してゆき、数々のアヴァンギャルド系プレイヤーたちと共演してゆきました。

本作はケニー・ホイーラーが1970年代に注目されることになったECMレーベルでの第1作であり、全曲自身のオリジナルからなっており、そのクリエイティヴな感性が光る内容です。
ここでは、フリューゲルホーンによる名プレイを存分に聴かせていますが、目を引くのは共演しているメンバーです。ピアノにはキース・ジャレット、ベースにはデイヴ・ホランド、ドラムスにはジャック・ディジョネットと、この上なく豪華なメンバーが揃っており、ワン・ホーン・カルテットの編成で聴きごたえ十分な演奏を披露しています。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
21分を超える長尺な1曲“ヘイオーク”。

曲の冒頭から透明感あふれるケニー・ホイーラーのフリューゲルホーンが響きわたり、しなやかに躍動するキース・ジャレットのピアノ、フレキシブルにリズムを繰り出すデイヴ・ホランドとジャック・ディジョネットのコンビネーション。聴き始めると知らず知らずのうちに引き込まれてしまいそうな演奏です。
テーマらしいテーマがあるようでないようで、曲が進んでいくと、いつのまにかフリューゲルホーンのソロに突入しています。細かいバッセージを混ぜ合わせながら独創的なソロを展開します。続いてピアノ・ソロ。独特な唸り声も発しながら、エモーショナルなフレーズを繰り出してゆきます。一段落するとベース・ソロに移り、バックでピアノ、ドラムスがキープする中、どっしりとしたプレイで聴かせます。そのうち、ピアノが呼び戻すように冒頭のテーマが再び演奏され、音量を落として演奏を終えるかと思いきや、ここからバックの演奏は休止し、ピアノだけのソロが続いてゆきます。やがて、演奏がピタッと止まると、全員での演奏が再開。ここからがこの曲の後半となります。自由な展開でテンポはルバートぎみの中、フリューゲルホーンのソロが進行します。そして徐々に高揚してくると、そこからピアノにソロが渡され、浮遊するような感覚を持続しながら、演奏は一気に盛り上がりを見せます。またフリューゲルホーンが加わってくると、イマジネーションに満ちたプレイで魅了してゆきますが、それが収まってくると、ドラムスだけになり、繊細なかつダイナミックなシンバルワークを披露します。いったん静まるとこれで終わりかと思えますが、そこからまたひと展開始まり、決して長くは続かず、奇妙なエンディングともいえる様相をみせて曲を終えます。非常に自由度の高い音楽になっていますが、ここで演奏する全員がすぐれたインプロヴァイザーゆえ、21分という時間の中で、これだけドラマティックな演奏になったといえます。
ケニー・ホイーラーは本作をはじめとしてECMレーベルに続々とリーダー作を残していますが、そのキャリアの中では、ヴォーカルのノーマ・ウィンストンとピアノのジョン・テイラーとのトリオ、アジマスでの活動も特筆すべきものになっています。また、ECMレーベルでの最後のスタジオ・アルバムとなった『ソングス・フォー・クインテット』はケニー・ホイーラーの生前には発表されず、亡くなった2014年9月の翌年2015年にリリースされました。

国内盤SHM-CD

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2024年07月19日 10:00