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【追悼】秋山和慶 84歳

秋山和慶

2025年1月26日、世界的指揮者、秋山和慶氏が肺炎のため亡くなったことが1月27日、所属事務所のヒラサ・オフィスより発表されました。84歳でした。1月23日に怪我により引退表明を出されたばかりで、80歳を過ぎて、ますます充実した指揮活動をされていただけに残念でなりません。60年にわたる音楽界への多大な貢献に感謝を捧げるとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。
(タワーレコード)


秋山和慶(あきやま かずよし、1941年1月2日 - 2025年1月26日)

東京交響楽団、ヴァンクーヴァー交響楽団、九州交響楽団という3つのオケの桂冠指揮者、広島交響楽団の終身名誉指揮者、中部フィルハーモニー交響楽団芸術監督・首席指揮者、日本センチュリー交響楽団ミュージックアドバイザー、岡山フィルハーモニック管弦楽団ミュージックアドバイザー、オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ芸術顧問などを兼務しながら、同時に洗足学園音楽大学芸術監督・特別教授、京都市立芸術大学客員教授として後進の指導も行う、真に偉大な名指揮者でした。

秋山氏の凄いところは、演奏の難しい膨大な楽器編成による作品でも、難なく演奏できてしまうところです。複雑な楽譜であっても、その理解が深いことに加え、指揮法も完璧。言葉の通じない外国のオーケストラでも、指揮棒の動きだけですべてを伝えることができた、というエピソードがあるほどの物凄いテクニックの持ち主でした。

そのテクニックは恩師斉藤秀雄(1902~74)から授けられたものでした。14歳のとき桐朋学園オーケストラの演奏会を聴き、感激して楽屋に当時学生の小澤征爾氏を訪ねたところ、いきなり後の師匠の斉藤秀雄に「こいつ指揮やりたいそうです」と紹介され、なすがままに指揮者修業に入りました。

1964年、23歳で指揮者デビューし、翌年には東京交響楽団の音楽監督に就任。指揮者として日本で活動していたところ、1968年にトロント交響楽団の指揮者になっていた小澤征爾氏から招かれ、1年間、トロント交響楽団のアシスタントを務め、海外での活動が始まります。

1972年(31歳)にはカナダ西海岸のヴァンクーヴァー交響楽団の音楽監督となり13年間もその地位にありました。この間にヴァンクーヴァー交響楽団のアンサンブルは飛躍的に向上。退任後もヴァンクーヴァー交響楽団は秋山氏に桂冠指揮者の称号を与えて現在も年に数回指揮をとっていました。

東京交響楽団の指揮を優先してベルリン・フィルからの客演依頼を3度断った、というエピソードが物語る通り、地位や名誉を求めない方ですが、実力は間違いなく世界のトップクラスでした。レコードやCDの活動も派手ではありませんでしたが、半世紀を超える長い録音キャリアの中で100枚を優に超えるディスクを発表してきました。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄 2021年1月記/2025年1月改稿)

東京交響楽団との共演


【参考音源】 秋山和慶&東京交響楽団ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付」より第1楽章

東京交響楽団は1964年に23歳の若さで音楽監督に就任以来、桂冠指揮者として引退されるまで、実に60年もの関係を持ったオーケストラです。ここでは王道名曲のベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付」、最新録音のブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」とドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」、秋山氏好みの選曲と言えるマーラー:カンタータ「嘆きの歌」(初稿版)などをご紹介します。



広島交響楽団との共演


【参考映像】ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調作品15
指揮:秋山和慶 ピアノ:マルタ・アルゲリッチ 管弦楽:広島交響楽団
2015「平和の夕べ」コンサート 2015年8月5日ライヴ / 広響チャンネル

秋山氏は1998年に広響の首席指揮者・ミュージックアドバイザーとなり、2004年には音楽監督・常任指揮者に就任、終身名誉指揮者として深い関係を継続しました。近年、東武レコーディングズが、秋山&広響がライヴ録音した名作交響曲を続々とCD化しており、最新作のハイドン&モーツァルトに加え、ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーと、秋山先生の指揮で交響曲の主要名作をCDで楽しめるようになりました。。


九州交響楽団との共演


【参考映像】ブラームス/交響曲 第1番 ハ短調 作品68
2012 年11月22日(木)アクロス福岡シンフォニーホール
指揮:秋山和慶  管弦楽:九州交響楽団

秋山氏は2004年に九州交響楽団のミュージック・アドヴァイザーに就任。その後首席指揮者となり2013年まで務め、その後も桂冠指揮者として関係を続けました。チャイコフスキー:マンフレッド交響曲、マーラー:交響曲 第9番、ワルキューレの騎行 秋山/九響 スーパー・サウンズ、華麗なる序曲・前奏曲集と、何れも秋山氏の指揮が冴える後期ロマン派の大編成作品が録音されています。


オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラとの共演


秋山氏は吹奏楽の指揮でも名高く、とくにオオサカ・シオンには2003年より特別指揮者、芸術顧問として長く携わりました。組曲「展覧会の絵」、ヤナーチェク:シンフォニエッタ、交響詩「ローマの祭り」はフル・オーケストラでも十八番としている作品。「いにしえの時から」には今話題のジョン・ウイリアムズによるスター・ウォーズ三部作の音楽が収録されています。


映像作品と書籍


DVD「斉藤秀雄methodによる指揮法」は、数多くの著名な指揮者を輩出している『斉藤秀雄メソッド』による映像解説作品。書物ではなかなか分かりにくかった指揮法を指揮者の姿を全方向から捉え、これによって身体との位置関係を明確にし、映像化したベストセラー。監修・出演:秋山和慶(84分)。
DVD「やさしい合唱指揮法」は、児童が指揮を行い、誰もが間違いやすい問題点を指摘し、はっきりと分かりやすく解説。また、模範指揮は、指揮者の動きを前後からはっきりとらえ、あくまでも指揮法の技術習得にターゲットを絞った映像を使用。監修・指揮:秋山和慶(50分) DVD「秋山和慶のオーケストラ入門 Vol.1 オーケストラの楽器」は、オーケストラを教室の中で理解できる最高の音楽教材。小学生にも親しみやすい曲を十数曲実際に演奏しながら、オーケストラの楽器の仕組みとそれぞれの働きを、丁寧に分かりやすく、そして楽しく解説しています(52分)。
DVD「秋山和慶のオーケストラ入門 Vol.2 オーケストラと指揮者」では、オーケストラと指揮者の役割のそれぞれの働きや、実際の演奏会が開かれるまでの舞台裏を丁寧に分かりやすく、名曲を交えながら楽しく解説しています。
DVD「サイトウ・キネン・オーケストラ~斎藤秀雄没後30年記念」には2004年の齋藤秀雄メモリアルコンサートで秋山氏がモーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調K.136を指揮する映像が含まれています。
DVD「小澤征爾~レトロスペクティブ」、ブルーレイ「小澤征爾の芸術的遺産」には、1989年に秋山氏がシューベルト:交響曲第5番変ロ長調D.485を指揮する映像が含まれています。
書籍「ところで、きょう指揮したのは? 秋山和慶回想録」は秋山氏の決して順風満帆とは言えなかった、しかし結果的には栄光に満ちた指揮者人生を振り返っています。本のタイトルは氏の理想、指揮者が目立たずにオーケストラが素晴らしい演奏をすることを、言葉にしたもの。その誠実で謙虚な人柄と音楽性が、生来のものに加え、師の斎藤秀雄や、苦難に満ちた東京交響楽団との歩みなど、人生の不思議な巡りあわせによって生まれたことが実感できる、音楽好きならば実に面白く、感慨深く読める一冊だと思います。(2025年1月30日現在、版元品切れ)



カテゴリ : ニュース

掲載: 2025年01月28日 12:00

更新: 2025年01月31日 11:30

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