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ザ・バンド 世界の音楽史における“最高峰”の位置付け……。伝説的グループに押し上げた魅力に迫る

ロックを語る上ではを外すことはできない、アメリカの伝説的バンド「ザ・バント」。彼らの魅力について余すことなく語っているのが、池上晴之の著書「ザ・バンド 来たるべきロック」だ。

●普遍性と独創性の共存こそが「ザ・バンド」の本質

ザ・バンド」はカントリーやフォークの要素が強く、ストレートな“ロックバンド”とは一線を画する存在である。筆者も以前、とある新聞社と「ザ・バンドはロックバンドなのかどうか」で議論になったことがあるという。

ザ・バンドの初期のスタジオ録音のアルバム、特にセカンド・アルバム『ザ・バンド』がいわゆる「ロック」ではないことについては、ぼくもおおむね同意します。しかし、にもかかわらず、ザ・バンドは紛れもなく「ロックバンド」なのです。

「ザ・バンド 来たるべきロック」より

筆者である池上は、ここに「ザ・バンド」の音楽を論じる際に生じる分かりにくさがあるという。スタジオで録音されたアルバムの音楽は多様で複雑で、ひとくちに「ロック」と言えるほど単純な音楽ではない。

ぼんやり聴いていると普通の曲なのに、よく聴くとどの曲にも必ずどこかにそれまで聴いたことのない、未知の不思議な音楽がある。まさにこれこそが、ザ・バンドの音楽の本質「普遍性と独創性の共存」なのだ。スタジオ録音の曲をよく聴いてみれば、一曲として似た曲と演奏がないのに、どの曲も奇をてらうことなく普遍性をもっていることに気づくだろう。

●ミック・ジャガーの「ザ・バンド」の評価

ザ・ローリング・ストーンズ」のボーカルとして知られるミック・ジャガー。「ザ・バンド」のライヴを初めて観た彼は、「なんだ、レコ―ドと同じじゃないか」と言ったそうだ。池上によれば、ストーンズはスタジオ録音とは異なる音楽的価値をライヴで表現することに意味を見出し、ライヴの一回性を重視したバンド。そのためミック・ジャガーとしては、スタジオ録音のオリジナルをライヴで再現して演奏するのでは意味がないと言いたかったのではないかと指摘している。

しかしザ・バンドは、スタジオ録音でも基本的にはライヴのように全員で一斉に演奏していた。つまり「スタジオ録音がライヴ演奏と同じ」なのであって、「ライヴ演奏がスタジオ録音と同じ」ではないのだ。

よく考えてみれば、ライヴ盤も録音されたものである以上、ライヴではない。ライヴ音源を使用してはいるが、録音は録音だ。つまるところライヴ盤は、ライヴの一回性という神話を逆手に取った音楽的表現だと言えるだろう。

「ザ・バンド 来たるべきロック」より

●空白で魅せる高度な演奏技術

以前ザ・バンドのベーシストであるリック・ダンコの演奏を聴いた観客が、ベースのアタマの一音を“よく”外していると指摘したことがあるという。これはダンコの技術不足によって引き損ねているのではない。その証拠にアメリカの「Bass Player」誌で、ダンコは以下のように語っている。

「ビートのトップをヴォーカリストのために残しておくのはいいことだ」

「ザ・バンド 来たるべきロック」より

つまり、ヴォーカリストの歌い出しの音に重ならないようにわざとベースの音を外して、意図的にスカスカな演奏をしていたことになる。

そんなザ・バンドの演奏について、シンガー・ソングライターの臼井ミトンは「技術が透明になってしまっているくらいの上手さ」と表現。シンプルで素朴ながらも、高度な演奏技術を称賛している。またドラマーの沼澤尚も「全員が驚異的な職人」と評価し、「ザ・バンド」が世界の音楽史において“最高峰の位置”にいると賛辞を惜しまない。そんな沼澤の言葉を引用しつつ、池上も同意の意を示した。

決して大げさではない。なぜなら、音楽の歴史上で、「バンド」のメンバーが作詞・作曲をして、バンドの「演奏そのもの」を完成した「オリジナル作品」として「録音」で提示したのは、ロックという音楽が初めてだからだ。ロックバンドで、ザ・バンドほど音楽的にすぐれた「演奏=録音」を多く残したバンドはない。

「ザ・バンド 来たるべきロック」より

本書を通して「ザ・バンド」を深堀りしていくと、“ロックとはなんなのか”が見えてくる。ザ・バンドのコアなファンはもちろん、ザ・バンドを聴いたことがない人も、音楽という共通のテーマにおいて十分に楽しめる一冊だろう。

ザ・バント オリジナル・アルバム

タグ : レビュー・コラム

掲載: 2025年03月11日 09:49

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