『激ロック』スペシャルコーナー【3月レコメンドアイテム】
ARCH ENEMY / 『Blood Dynasty』
GENRE : MELODIC DEATH METAL
エクストリームに、メロディックに
自らの殻を打ち破る最新作!
“これまでやってきたことの限界を押し広げており、ARCH ENEMYに期待されるもの全て、そしてそれ以上のものがある”というリリース資料記載のMichael Amott(Gt)の言葉の通り、12作目となる最新アルバム『Blood Dynasty』は意欲的な作品に仕上がった。近作のエクストリーム・ミーツ・クラシック・メタルを極めたアグレッシヴな音楽性は継承しつつ、初期作を彷彿させるような、大胆なテンポ・チェンジから挿入されるメロディックなパートがインパクト抜群。Michaelと新たに加入したJoey Concepcionのツイン・ギターも絶妙なコンビネーションを見せているし、Alissa White-Gluzが全編で美麗且つ力強いクリーンVoを披露するカバー曲のTrack.9は新境地と言える。
菅谷 透【ライター推薦】
SILVERSTEIN / 『Antibloom』
GENRE : POST-HARDCORE
結成25周年!ポストハードコアの
ベテランが放つ2部作アルバム第1弾!
結成25周年を迎えたポストハードコア・シーンのベテラン・バンド、SILVERSTEINが節目に発表する2部作アルバムの第1弾。8曲で約23分とコンパクトな収録時間の作品だが、強烈なファスト&ヘヴィ・チューンのオープナーを皮切りに、シンセを用いたモダンなラウド・ナンバーや、ドラマチックあるいはポップな歌モノ、ルーツにあるポップ・パンクまで楽曲は実に多彩で、バンドのディスコグラフィの様々な瞬間をパッケージしたかのよう。それでいて軸となるエネルギーやエモーションが全編にわたり貫かれていて、根底にある不変の信念を感じさせる。時代に迎合することも取り残されることもなく、何より歩みを止めることなく活動を続けてきた彼等だからこそ到達した境地だ。
菅谷 透【ライター推薦】
JINJER / 『Duél』
GENRE : PROGRESSIVE METALCORE
祖国 ウクライナの現状に対する怒りや悲しみ、人生における苦闘等が反映された
JINJERの過去最高にダークで圧倒的に力強い傑作
2025年2月に奇跡の再来日を成功させた、ウクライナが世界に誇るプログレッシヴ・メタルコア・バンドによる待望の最新作だ。現代メタル・シーンにおいて最もパワフルなヴォーカリストの1人と言っても過言ではないTatiana Shmaylukによる美と暴虐を操る驚異的なヴォーカル・パフォーマンスを軸として、複雑に絡み合う情報量の多い要素を卓越した技術を持つ演奏隊が緩急自在の手腕でまとめ上げ、時に重苦しく、時に叙情的に聴く者の心を揺さぶるドラマチックな全11曲の作品として見事に昇華。本作は祖国の現状に対する怒りや悲しみ、人生における苦闘等が如実に反映された過去最高にダークな作品であり、同時に圧倒的に力強い傑作である。
井上 光一【ライター推薦】
OBSCURA / 『A Sonication』
GENRE : TECHNICAL DEATH METAL
テクニカル・デス・メタルの代表格 OBSCURA
複雑で緻密なアンサンブルは健在ながら、コンパクトでいっそう洗練された印象の最新作
今や20年以上のキャリアを誇る、テクニカル・デス・メタルの代表格 OBSCURA。前作『A Valediction』(2021年)から中心人物のSteffen Kummerer(Vo/Gt)以外のメンバーを総入れ替えする形で制作された本作は、高度なテクニックに裏打ちされた複雑で緻密なアンサンブルは健在ながら、作曲面においては過去作と比べてコンパクトな作りであり、優美なメロディの分量が増えていっそう洗練された印象だ。往年のファンには賛否が分かれそうな内容ではあるが作品としてのクオリティはさすがの一言。なお、元メンバーとのトラブルは本稿執筆時点では真相が明らかとされていないため、現状は不問とさせていただくことをご了承願いたい。
井上 光一【ライター推薦】
BLEEDING THROUGH / 『Nine』
GENRE : METALCORE
2000年代USメタルコア・シーンを牽引したBLEEDING THROUGH
新たな黄金期の始まりと言っても過言ではない、見事な力作
2000年代USメタルコア・シーンを牽引したオレンジカウンティ産の5人組 BLEEDING THROUGHによる通算9枚目のアルバムで、2018年の復活作『Love Will Kill All』から約7年ぶりとなった最新作だ。本作はメタルコアにゴシックなシンフォニック・ブラック的要素を取り入れたバンドの核となる音をブレることなく鳴らしつつ、キーボードを担うMarta Demmelのヴォーカルを大々的にフィーチャーしていることも功を奏し、Brandan Schieppatiによるアグレッシヴ且つ重厚なヴォーカルとのコントラストも絶妙な塩梅。彼等にとっての新たな黄金期の始まりと言っても過言ではない、偉大な先駆者が生み出した見事な力作だ。
井上 光一【ライター推薦】
SCOUR / 『Gold』
GENRE : BLACK METAL, GRINDCORE, BRUTAL DEATH METAL
Philip H. Anselmo(Vo/PANTERA/DOWN etc.)のサイド・プロジェクト SCOUR
全編通して激烈極まりないエクストリーム・メタルの傑作
泣く子も黙るヘヴィ・メタル・シーンのレジェンド、Philip H. Anselmo(Vo/PANTERA/DOWN etc.)率いるサイド・プロジェクトによるデビュー・アルバム。Philの咆哮とブラック・メタル譲りのトレモロ・ピッキング、爆発的なブラストビートを数秒聴けば、本作が趣味程度のプロジェクトではないことは瞬時に理解できるはずで、全編通して激烈極まりないエクストリーム・メタルの傑作となっている。同時にデス・メタルやグラインドコア、ブルータル・デスにメロディック・デス・メタルや実験的な要素までを網羅した音作りであり、ブラック・メタルらしいローファイなものではなくモダンなプロダクションというのも本作においてはプラスに作用していると言えよう。
井上 光一【ライター推薦】
WINONA FIGHTER / 『My Apologies To The Chef』
GENRE : POP PUNK
ポップ・パンク・シーン期待のニューカマー WINONA FIGHTER
エモみ少なめ、パンクマシマシの硬派なデビュー・アルバム
ポップ・パンク・シーン期待のニューカマー WINONA FIGHTERのデビュー・アルバム。昨年Rise Recordsと契約し、パワフルなフロントウーマンのCoco Kinnonを中心に勢いに乗っている彼等。Coco Kinnonは、美人さんなんだけど飾り気がなくて元気いっぱいな雰囲気が、初期のPARAMOREのHayley Williams(Vo)を思わせる魅力がある。楽曲に関しては、エモみ少なめ、パンクマシマシの硬派なサウンド。女性ヴォーカル好きだけでなく、PENNYWISEあたりのゴツめなバンドが好きな人にも刺さりそう。Rise Recordsは渋めのベテランを集めつつ、こういうこれから旬が来そうなバンドもしっかり育ててるのがすごい。
山本 真由【ライター推薦】
FACS / 『Wish Defense』
GENRE : ALTERNATIVE ROCK
轟音の掛け合いと詩的な詞が、曖昧な“自己の二面性”という主題を照らし出す
シカゴ発アート・ロック・トリオ FACSの6thフル・アルバム
ヘヴィ・サウンドがボトムにありながら、ドリーミーなギターと小気味よいドラミングが強烈なシンフォニーを生み出す、シカゴ発アート・ロック・トリオ FACSの6thフル・アルバム。不穏なベースラインが印象的なOPトラック「Talking Haunted」から、不協和音と暗闇を切り裂くような轟音の掛け合いが、詩的に紡がれた詞と共に、本作の主題である曖昧な“自己の二面性”を照らし出す。引き算による実験的な音の配置には、そんな二面性を持つ人間の本心を確かめたいという探究心が窺える。またバンドが鳴らす自然体の音をありのまま引き出す、故Steve Albiniのエンジニアリングにも魂が震える本作。聴きやすさが担保された表題曲や「You Future」に宿る、FACS特有の混沌なアンビエンスも体感してほしい。
山本 剛久之【ライター推薦】
LACUNA COIL / 『Sleepless Empire』
GENRE:ALTERNATIVE METAL
オルタナ・メタルやポストハードコアとも親和性がある域にまで到達した
イタリア発ゴシック・メタルの重鎮 LACUNA COILの10thアルバム
2022年に単独来日公演を開催した、男女ツインVoを擁するイタリア発バンドの10thアルバム。ゴシック・メタルの重鎮という触れ込みで紹介されることが多い彼等だが、リリースごとに強靭さを増してきたスクリームとヘヴィネスは本作ではオルタナ・メタルやポストハードコアとも親和性がある域にまで到達しているし、表現力豊かなクリーンVoと、ゴシック・メタル由来のダークさや美意識は独特の緊張感ある雰囲気を醸し出している。Randy Blythe(LAMB OF GOD)、Ash Costello(NEW YEARS DAY)のゲストVoも楽曲世界にさらなる奥行きを与えている。新生LINKIN PARKで女性Voをフィーチャーしたラウドロックに興味が湧いたという人にもおすすめ。
菅谷 透【ライター推薦】
【激ロック】
ラウドミュージックに特化したフリー・マガジン、ポータル・サイトの運営、そして国内外のバンドを招聘してのライヴ・イベント、24年間続くROCK DJパーティーの企画、運営を行っている。さらには渋谷/新宿/下北沢に位置する「Music Bar ROCKAHOLIC」、また渋谷にあるロック・ファッション・ショップ&通販サイト「GEKIROCK CLOTHING」の運営等、クロスメディアを超えたクロスカルチャー展開をシーンに仕掛けるラウドミュージック専門のクリエイティヴ集団である。
タグ : PUNK/EMO ハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)
掲載: 2025年03月24日 12:52