映画『きさらぎ駅』の続編公開で再注目したい「ネット怪談」!現代社会が作り上げる恐怖の物語

2022年6月に劇場公開され、ホラー作品ながら大きな注目を集めた映画『きさらぎ駅』。その3年後の世界を描いた続編『きさらぎ駅Re:』が6月13日から公開される。主演は前作できさらぎ駅から帰還した宮崎明日香を演じた本田望結。前作主演で、きさらぎ駅に取り残された堤春奈を演じる恒松祐里のほか、佐藤江梨子、寺坂頼我など続投するキャストも多い。また奥菜恵や大川泰雅など新たな顔ぶれも加わり、パワーアップされた異世界物語に注目が集まっている。
●『きさらぎ駅』の続編公開で再注目したい“ネット怪談”
「きさらぎ駅」はもともと有名な「ネット怪談」のひとつ。ネット掲示板「2ちゃんねる」に「はすみ」と名乗る女性が、いつもの電車に乗っていたはずが「きさらぎ駅」という知らない駅に着いたと書き込みをしたことから始まった―。
その後も不可思議な出来事が起こる様子を実況形式で投稿。はすみの臨場感のある投稿や、最後に消息が途絶えたこともネット上では大きな話題となった。
「きさらぎ駅」のように実話とも創作とも判断できないネット怪談は無数に存在している。かつて怪談は「口裂け女」や「学校の怪談」のように、局所的な噂が全国に広がっていったが、近年はインターネットの普及により拡散速度が上がりミーム化もしやすい。
『きさらぎ駅』シリーズの永江二朗監督はネット怪談発の映画『リゾートバイト』も手がけており、近年では「ひとりかくれんぼ」や「ことりばこ」など、ネット怪談を原作とした映画化の事例は増えている。
そんなネット怪談を「民俗(民間伝承)」の一種としてとらえ、学術的に語った書籍「ネット怪談の民俗学」だ。
例えば「きさらぎ駅」は、「(最初の投稿者である)はすみとオカルト板の住人たちとの思わぬ共同作業によって構築されていくプロセスからなる、出来事の連鎖」と分析。作者のいるホラーとは異なり、多様な共同構築によるネット怪談を時間制から実況・逐次更新・連鎖の観点から捉えている。
連鎖していったネット怪談のひとつが「くねくね」だ。始まりは「異様な曲がり方をした白い人影」を目撃した後、知的障害になったという投稿から。その後年月を経て別スレッドにも似た経験や不可解な出来事が次々と報告され、徐々に怪事と精神的な異常状態が結びついたものが「くねくね」と総評されるようになった。ひとつの怪談が次々と別の怪談へと連鎖していったのだ。
投稿者や閲覧者、その他様々な要因により共同的に構築されるネット怪談。本書による新たな視点を知った上で、映画を鑑賞してみるとさらに楽しめるかもしれない。
「ネット怪談の民俗学」著者 廣田龍平著書
タグ : レビュー・コラム
掲載: 2025年04月17日 10:40

