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「タモリ倶楽部」「ケンミンSHOW」「アド街ック天国」など人気番組の裏側に迫る!数々のヒット番組を生み出した伝説的クリエイターが語るモノづくりの流儀とは

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ネットの台頭などが要因で日本人のテレビ離れが進んでいるといわれて久しいが、かつては人気テレビ番組が数多く制作され、視聴者の心を掴んでいた。例えば「タモリ倶楽部」、「出没!アド街ック天国」、「ボキャブラ天国」などは、いずれも長く続いた・続いている人気番組だ。

これらの番組には、制作会社ハウフルスによって作られているという共通点がある。書籍「「深夜」の美学 『タモリ倶楽部』『アド街』演出家のモノづくりの流儀」は、ハウフルスの番組制作の最高責任者であり、代表取締役演出家を名乗っていた会長・菅原正豊が自身の哲学を語った1冊だ。あの人気番組はいかにして作られたのか。知られざるテレビ制作の裏側には、モノづくりのヒントが詰まっている。

●電話帳のように分厚い台本が用意されていた「タモリ倶楽部」

菅原は、テレビに“深夜”という概念を作った「11PM」からキャリアをスタートさせており、本人も自分の本質は“深夜”だと語っている。深夜を主なフィールドにテレビで遊んできた菅原を代表する番組の1つが、様々な社会現象をバラエティーチックに取り上げた「タモリ倶楽部」だ。

当時のテレビでは、深夜番組はまだ未開拓の地。菅原は田辺エージェンシーの社長であった田邊昭知から、タモリを起用して番組を作り、深夜を開拓せよという使命を与えられた。そんな経緯で生み出された「タモリ倶楽部」は、台本などなさそうなユルい雰囲気が特徴だったが、実はしっかりした台本があったという。台本を書いていた町山広美は、

「電話帳みたいな分厚い台本書いてました」 (※注)

と語っている。

深夜番組は予算が少なく、やればやるほど赤字という世界。他の制作会社なら、番組制作にかける金や時間など、何もかもを極力削って経費を抑えようとしていたかもしれない。しかし菅原は「台本は一つの読み物」と考え、ブラッシュアップに時間と労力をかけた。以下は、菅原の言葉だ。

お金のことももちろん多少は考えますけど、やっぱりやるからには、みんなになんかすげえなって思ってもらいたいじゃないですか。 (※注)

●会議中の一言から生まれた番組「ケンミンSHOW」

菅原いわく、会議は“戦場”だ。

他人が面白いアイデアを出したら、それ以上のアイデアを出してやろうと思うし、負けたくないじゃないですか。

やっぱりいいアイデア出したやつが勝ちだし、全部戦いだと思うんです。

だから、ADでもなんでも面白いこと言ってほしいんです。 (※注)

実際に、ADの一言によって生まれた番組がある。日本全国の行事や習慣、県民性などにスポットを当てた番組「ケンミンSHOW」だ。

ある企画会議で、テレビモニターに何かを写そうとしたところ、画面がノイズになったという。それを見たADの女性が、

「あー、ジャミジャミやー!」 (※注)

と口にした。彼女は福井県出身で、福井ではノイズを「ジャミジャミ」と呼ぶらしい。面白いのは、女性ADが「ジャミジャミ」を日本全土共通の言葉だと思っていたという点。菅原たちはそこに着目し、「ケンミンSHOW」を生み出した。“面白い”の種は、どこに転がっているかわからない。

●“編集は凶器”であることを意識した「アド街ック天国」

「アド街ック天国」は、あらゆる街に出没してその街を徹底的に紹介するというコンセプトの番組。毎回、様々な人や店などが紹介されるのだが、菅原は紹介するにあたって以下のことに気をつけていたという。

やっぱり制作者の一番のマナーは「責任」だと思うんです。編集権というのは、“凶器”ですから。本当は免許が必要なんじゃないかとさえ思います。編集次第でその人がどんな風に映るか決まっちゃう。

自分がもし出る立場だったとしたら、どこを使ってほしいかを考えて編集しろ!とはよく言いますね。 (※注)

近年、テレビでは出演者の意図に反した発言の切り取りや編集が行われ、度々問題になっている。面白さを追求する姿勢は大切だが、面白さのためなら何をしてもいいわけではない。その線引の重要性を知る菅原が携わったからこそ、1995年に放送を開始した「アド街ック天国」は、今なお続く人気長寿番組となったのだろう。

時代の流れとともに人々の感性や常識が変わり、昔は面白かったものが「つまらない」と言われるようになった。しかし、過去に面白いと言われたものの中には、今でも通用するものがあるはず。テレビでもその他の媒体でも、モノづくりに興味のある人はぜひ本書を手に取ってみてほしい。

(※注)菅原正豊 『「深夜」の美学 『タモリ倶楽部』『アド街』演出家のモノづくりの流儀』より

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タグ : レビュー・コラム

掲載: 2025年04月15日 12:00

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