メガロドンはどこかで生きている……?ロマンあふれる「サメ」の世界とその進化

海の王者と呼ばれる「サメ」。『ジョーズ』など数々の映画の題材としてその恐ろしさが描かれる一方で、ジンベエザメのように水族館の人気者になったりと、何かと人間に愛されている魚だ。しかし、実はサメの進化研究の第一人者をもってしても「サメが何たるかわからない」という。今回ご紹介する「知られざるサメの世界 海の覇者、その生態と進化」は、そんなサメの世界を研究者の目から詳しく解説した一冊だ。
●サメの歯には様々なバリエーションがある?
サメの進化研究の第一人者ジョン・メイシー博士は、長年の研究の結果、一般に「サメ」と言われている生き物を定義する具体的な形態的特徴が見つからないとの結論に行き着いた。
例えば「歯」。サメといえば「恐ろしい歯」を思い浮かべる人も多いだろうが、その「歯」についても種類によってかなりのバリエーションがあるらしい。
サメの歯のデザインは、その機能によって大きく2つのグループに分けることができる。一つはナイフ形、もう一つはフォーク型である。(中略)なお、自然に例外はつきもので、ナイフ形とフォーク型のどちらにも属さない歯も多数存在する (※注)
特徴的な「歯」だけでも多種多様な形があるという話には、なるほどサメの定義付けは困難だと思わざるを得ない。
ちなみに映画『ジョーズ』のポスターで、泳ぐ女性を海中から狙う恐ろしいサメ。作中で人々を襲ったのは「ホホジロザメ」だが、ポスターは細長い歯を持つ「アオザメ」の頭を参考に描かれている。
●メガロドンは今もどこかで生きている?
ホホジロザメとアオザメについては、進化の過程を示す「カルカロドン・ハッベリ」の化石が近年発見されている。ホホジロザメとアオザメはそもそも近縁種だが、ハッベリの持つ「細長い歯のシルエットと不明瞭な鋸歯」はちょうどホホジロザメとアオザメの中間型。
およそ1000万年前、アオザメの系譜から分かれたホホジロザメの祖先は大型化の道を進み、より大型の餌を捕食できるように幅広くて鋸歯の発達した歯を手に入れた。この途中の姿を私たちに教えてくれる化石こそ、カルカロドン・ハッベリだというわけだ (※注)
しかし実は、長らくホホジロザメの祖先と考えられていたのは「メガロドン」だった。歯の形がよく似ていることやメガロドンが絶滅した時期とホホジロザメが出現した時期が一致することからそう思われていたが、数々の研究により今は否定されている。
メガロドンは2,500万年前頃に出現したとされる、最大全長16メートル程にもなる超巨大古代生物。そのメガロドンが、なんといまも生存しているという説がある。
始まりは、1875年にタヒチ近くでメガロドンの歯が見つかったこと。それも一部がまだ白く、化石化の途中にあるような状態のものだ。研究の結果、歯は1万1,000年前のものと判明。縄文時代の始まりは約1万7,000年前だから、それよりもずっと新しいということになる。
もしかすると今もどこか人目につかないところで、メガロドンが生きているかも……。そんなロマンを感じる発見ではないだろうか。
●サメの「ロレンチーニ器官」とは
サメの「感覚」についても少し触れておこう。実はサメの目は、色を識別できているわけではない。その代わりに暗闇で物を見るのに役立つ「高感度センサー」を備えているが、そのセンサーをどう使っているのかについてはわからないそうだ。ちなみに嗅覚については、近年の研究でサメの嗅覚が他の魚と比べて特に優れているわけではないと判明している。
サメの「感覚」を語る上で欠かせないのが「ロレンチーニ器官」だ。ロレンチーニ器官とは、サメの特に頭部の皮膚に無数に存在する小さな穴のこと。実はサメは、ロレンチーニ器官によって電気を感じることができる。そのセンサーの精度は、15キロメートル離れた場所の乾電池一つ分の電圧に気づけるほど。
生物は生きるための筋肉活動や神経伝達で、周囲に微弱な電場を作り出している。サメはロレンチーニ器官を使ってその微弱な電場を感知して餌を探したり、自分のいる方角を知ったりしていると考えられているそうだ。
図鑑では知ることのできない、知られざるサメの世界。本書は少しでもサメに興味を持ち、彼らの生態を深く知りたいと思うならぜひおすすめしたい一冊だ。
※注)「知られざるサメの世界 海の覇者、その生態と進化」より引用
サメの世界
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掲載: 2025年06月10日 11:04

