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展覧会開催中!『火垂るの墓』を作ったアニメーション監督・高畑勲の思いとは……

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スタジオジブリの屋台骨として、宮崎駿監督とともに数々の名作アニメを世に送り出してきた高畑勲監督。麻布台ヒルズギャラリーでは2025年9月15日まで、「高畑勲展 日本のアニメーションを作った男。」が開催されている。没後7年の今、高畑勲展が開かれる理由とは?高畑が手掛けてきた、様々な作品や思いを振り返ってみよう。

●2025年は「高畑勲」にとって節目の年

高畑は1988年にアニメーション映画『火垂るの墓』の監督を務めたが、2025年は「戦後80年」の節目の年にあたる。戦争孤児の兄妹が戦時下を懸命に生きようとする姿を描いた本作は、戦争の悲惨さを伝える作品として高く評価されている。昨年、Netflixで世界190ヵ国以上に独占配信されたことが話題となったが、国内でも2025年7月から配信開始。8月の終戦記念日には7年ぶりのテレビ放映も予定されるなど、再注目されている。

今回の展覧会は、『火垂るの墓』の新たな資料展示も話題の1つ。旧日本海軍の重巡洋艦「摩耶(まや)」の下書き原画が初公開されているが、描いたのはアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの監督として知られる庵野秀明だ。じつは庵野は、当時スタジオジブリの製作スタッフだったという。

また、2025年は高畑の生誕90年でもある。1959年に「東映動画」に入社した高畑は、1970年代に現在も人気の高い『パンダコパンダ』や『アルプスの少女ハイジ』『赤毛のアン』など数々のアニメーションを発表。アニメーション監督として確固たる地位を確立した高畑は、東映の同僚だった宮崎駿とともに1985年の「スタジオジブリ」設立に参加した。

高畑作品の魅力の1つと言われるのが、卓越した「映像表現」だ。新たなアニメーション技法の開拓に挑み続け、1999年の『ホーホケキョ となりの山田くん』では、すべて「デジタル」の彩色で手描きのスケッチを表現した。また、遺作となった2013年公開の『かぐや姫の物語』では映像をさらに進化させ、手描きの線を生かした水彩画風の描法を採用。かつて主流だった「セル画」様式とは一線を画した美しいタッチで、より芸術性の高い作品を作り上げた。

そんな高畑を間近で見ていた、スタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫が執筆した書籍が「天才の思考 高畑勲と宮崎駿」。2人の天才を支え続けた鈴木の視点で、数々のジブリ作品の舞台裏が語られている。歴史に残る「名作」がいかにつくられたのか、作品を見た人にとって非常に興味深いエピソードが詰まった1冊と言えるだろう。戦後80年の夏、『火垂るの墓』を作った高畑勲の思いに触れてみてほしい。

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タグ : レビュー・コラム

掲載: 2025年08月01日 13:20