展覧会と共に味わいたい―映画で辿る「フィンセント・ファン・ゴッホ」の画家人生

東京都美術館で、9月12日から12月21日まで開催される「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」。本展では、ファン・ゴッホ家が受け継いできたファミリー・コレクションに焦点が当てられる。展示を前に、波乱に満ちたゴッホの画家人生を、ゴッホをテーマにした映像作品で振り返ってみたい。
●孤独と苦悩に悩まされたゴッホの半生を描く
2017年に制作された『ゴッホ 最期の手紙』は、青年アルマンが父から託されたゴッホ未投函の手紙を、ゴッホの弟・テオに届けるアニメーションドラマだ。拳銃自殺をしたとされるゴッホだが、果たして本当に自殺だったのか……。旅の途中で多くの人と出会ったアルマンは、彼の死因に疑問を抱き、その真相へ迫っていく。
本作は、総勢125人の現代画家が制作に参加したことでも話題になった。ゴッホのタッチを再現して描かれた62,450枚もの油絵は、高解像度映像によって“動く油絵”となり、摩訶不思議なアート映画へと変貌を遂げている。
また、ゴッホとゴーギャンの関係にスポットを当てた作品が、2018年に制作された『永遠の門 ゴッホの見た未来』。周囲からまったく才能を認められずにいたゴッホは、あるとき同業者のゴーギャンと出会い、南フランスのアルルで生活を共にしながら創作にのめり込む。しかし、ゴッホの最期は極度の孤独と苦悩に満ちた悲劇的なものであった……。
本作は、第75回ヴェネチア国際映画祭で主演のウィレム・デフォーが男優賞を受賞。ゴッホの苦悩と歓喜を疑似体験できる映像作品としても話題になった。
そして、1990年に制作された黒澤明監督の日米合作オムニバス集『夢』。第5話の『鴉』では、主人公がゴッホの名画「カラスのいる麦畑」に迷い込み、絵の中を渡り歩くゴッホの後をついていくシーンが描かれている。ゴッホ役は、映画『タクシードライバー』や『ギャング・オブ・ニューヨーク』の監督を務めたマーティン・スコセッシが演じている点も注目したい。
自画像や「ひまわり」などの作品が広く知れ渡っているゴッホだが、今回ピックアップした谷口義明の著書「ゴッホは星空に何を見たか」では、「星月夜」など星空を描いた作品に着目している。「星月夜」は、映画『ミッドナイト・イン・パリ』のポスターにも使用された印象的な絵画。銀河天文学を専門とする著者と共に、ゴッホの絵に隠された謎を多角的に検証してみてはいかがだろうか。
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掲載: 2025年08月19日 13:19

