書籍『愛するよりも愛されたい』、笑って学べる古典文学!?「万葉集」を令和言葉と奈良弁で訳すとこんなに面白かった!

7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された、現存する歌集としては日本最古となる「万葉集」。全20巻、4500首余りの歌が収録されているが、現代人にとっては中々とっつきにくいものである。そんな歌集を、令和言葉と奈良弁でわかりやすく訳したのが作家の佐々木良だ。中学や高校、大学の先生からも好評を博した“新しい万葉集”は、一体どのようにして作られたのだろうか。
●斬新な現代語訳に国内外から高い評価
美大を卒業後に学芸員をしていた佐々木は、2018年に書籍「美術館ができるまで」で作家としてデビューするも、後のコロナ禍で執筆の依頼がキャンセルに。そこで「自分でなんとかするしかねえ!!」と一念発起し、社員は“自分のみ”のたったひとりで出版社「万葉社」をスタートさせたという。元手はコロナ給付金の10万円、家賃4,000円の物件を借りてのスタートだった。
佐々木曰く、なぜ万葉集に着目したのかというと「“令和”は万葉集が由来なので、令和らしい万葉集を作りたい」と思ったことがきっかけ。現代語訳するにあたって現代の文献として、ギャル雑誌やリボン、ちゃお、ジャンプ、コロコロコミックスなどを読み漁ったそうだ。
そうして現代語にわかりやすく訳された令和版万葉集は、現在3冊刊行されており、シリーズ累計発行部数は26万部を突破。国内のテレビや新聞各紙で書評や特集が組まれただけでなく、フランスの「Courrier international」紙でも取り上げられるなど大きな話題を呼ぶこととなった。
今回ご紹介する「愛するよりも愛されたい」は、記念すべきシリーズ第1巻。第1番歌から「ねぇねぇそこの山菜摘みのお嬢ちゃん!」「おうちはどこなん?」「名前も知りたいわぁ」と佐々木節全開の訳で思わず笑みがこぼれてしまう。ちなみにこれは21代「雄略天皇」が詠んだ“民間人に一目惚れをして、ナンパする”歌である。
本書は現代語訳の隣のページに原文が載せられ、歌の意味などの補足も記されているため、万葉集を楽しく学ぶことができる一冊だ。古文が好きな人もそうでない人も、今も昔も変わらぬ恋の歌に触れてみてはいかがだろうか
●佐々木良『万葉集』シリーズ
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掲載: 2025年10月09日 18:18

