「ゴースト&レディ」大阪今冬開幕!藤田和日郎が描く「黒博物館」シリーズの魅力とは

2024年5月、東京で初演を迎えた劇団四季ミュージカル「ゴースト&レディ」。興奮冷めやらぬ中、今年12月に大阪にやってくる。本作の原作は、「うしおととら」「からくりサーカス」などを代表作に持つ藤田和日郎の「黒博物館」シリーズ。観る人を魅了してやまないシリーズの魅力にフォーカスを当ててみたい。
●史実にリンクする重厚なダークファンタジーの世界
「黒博物館」シリーズは、2007年発売の第1作目のコミックス「黒博物館 スプリンガルド」を皮切りに、「ゴースト アンド レディ」「三日月よ、怪物と踊れ」と現在3作が刊行されている。
舞台は19世紀、ロンドンの犯罪資料館・黒博物館。「スプリンガルド」は、怪人物・バネ足ジャックと事件解決に向けて捜査を進めるロンドン警察との戦いが、黒博物館の学芸員によって回想形式で語られる。
実際に、ロンドン中を震え上がらせた都市伝説であるバネ足ジャック。史実をベースに、サスペンスでダークな世界観と、歴史的・社会的背景、人間模様が複雑に入り混じり、重厚なゴシック活劇となっている。なお、コミックスには続編「スプリンガルド異聞 マザア・グウス」も収録されているので、こちらも必読である。
「ゴースト アンド レディ」は、かち合い弾と呼ばれる弾丸から話が展開していく。「私を取り殺してください」……劇場に憑りつく幽霊エドワード・グレイにそう懇願するのは、近代看護の母と呼ばれるフローレンス・ナイチンゲールだった。
生きる意味を見失い絶望するフローレンスと、裏切りにより命を落としたグレイは、やがて深い絆で結ばれ、フローレンスが信念を貫き看護の道を突き進む力となっていく。壮大な命の物語は、劇団四季のミュージカルとして舞台化。藤田和日郎の紡ぐ緻密なドラマを美しい舞台芸術と音楽で彩り、観る者を圧倒した。
第3作目「三日月よ、怪物と踊れ」では、女王主催の舞踏会で起きた怪事件の遺留品である赤いブーツが鍵となる。舞踏会が鍵を握る本作は、舞踏設定と振付に世界的プロダンサーTAKAHIROも参加したことでも話題となり、新感覚のエンターテイメントとしてもファンの心をわし掴みにした。
史実に基づきながらも、大胆な考察と綿密に構成されたドラマ、幾重にも折り重なる深いテーマ性を描いた「黒博物館」シリーズは、単に面白い漫画の範疇を超え、歴史、文化など多角的なアプローチで人を唸らせる作品となっている。
「黒博物館 図録 The Catalogue : Backyard of Black Museum」は、シリーズ3作の作者直筆の考察や原画、担当編集者との対談の様子、さらには「キャンディケイン」も初収録されており、ファン必涎の一冊となっている。漫画本編とともにチェックし、より深くこのダークな世界観に浸るのもいいだろう。
『からくりサーカス 完全版』全26巻 ボックス
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タグ : レビュー・コラム
掲載: 2025年10月27日 20:29

