『孤狼の血』に『盤上の向日葵』……緊迫感あふれる“警察小説”の名手・柚月裕子

2025年10月31日に公開された、坂口健太郎主演の映画『盤上の向日葵』。昭和から平成へと続く激動の時代を生きる、1人の青年の光と闇をドラマチックに描いた“ヒューマン・ミステリー”作品だ。原作は「孤狼の血」などを手掛け、“警察小説”の名手とも言われる柚月裕子。執筆作品が続々と映像化される柚月とは一体何者なのか、過去の作品たちを紹介していこう。
●華々しい受賞歴の数々……緊迫感あふれる柚月作品たち
2008年に「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、作家デビューを果たした柚月。本作では臨床心理士の佐久間美帆と、美帆の同級生で警察官の栗原久志が、福祉施設で暮らしていた少女の死の真相に迫っていくのだが……。調査が進むにつれておぞましい出来事が明らかになっていく様子や、登場人物に危機が訪れるシーンは読み応えがあるだろう。

「佐方貞人」シリーズ作品である「検事の本懐」は、2011年度「第25回山本周五郎賞」に候補入りし、2012年度には見事「第15回大藪春彦賞」を受賞した。さらに2016年の「孤狼の血」では、「第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)」も受賞している。
全3部作である「孤狼の血」は役所広司・松坂桃李の共演で映画化されており、暴力団対策法成立直前の広島の架空都市・呉原を舞台に物語は進んでいく。警察とやくざの“血で血を洗う”過激な攻防戦は、R15+指定でありながらも数々の映画賞を受賞するヒット作となった。
また、続編である『孤狼の血 LEVEL2』は「第45回日本アカデミー賞」にて最多13部門を受賞。「孤狼の血」原作シリーズは、柚月の代表作のひとつになったといえるだろう。
気になる映画『盤上の向日葵』は、2024年公開の『朽ちないサクラ』に続く柚月小説の映画化作品。山中で謎の白骨死体と共に発見された、この世に7組しか現存しない希少な将棋駒を手掛かりに、事件の真相に迫っていくストーリーになっている。
映像作品を観る前に原作小説を手に取ることで、登場人物たちの背景をより深く読み解いてみてはいかがだろうか。
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掲載: 2025年11月04日 21:30

