ルネ・シュメー『ビクター録音集』『HMV録音集』2025年12月11日/11月21日発売~宮城道雄との《春の海》で有名

英Biddulphによる貴重な復刻盤!
輸入盤CD
フランス生まれの女性ヴァイオリニスト、ルネ・シュメー(1887-1977)の英HMV時代と米ビクター時代の録音を集めた2枚(分売)。1932年に来日し、箏の宮城道雄と《春の海》を録音したことで知られる彼女の魅力を蘇らせる貴重な復刻です。ビクター録音集には、宮城道雄との《春の海》も収録されています。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)

日本ビクター蓄音機株式会社の洋楽レコード・カタログ(昭和8年)での紹介文

輸入盤CD
フランス生まれのルネ・シュメー(1887-1977)の米ビクター時代の録音を集めた1枚。先に発売されたHMV録音集(BIDD85064)と合わせて、長らく見過ごされてきたこのヴァイオリニストの魅力を蘇らせる貴重な復刻です。
1921年にカーネギーホールに於いてサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番をメンゲルベルクの指揮で演奏、「フランスのクライスラー」と称賛されたシュメーはアメリカでも人気を確立し、ビクター(後のRCA)と契約。クライスラー、エルマン、ハイフェッツらと並び、看板アーティストの証であるレッドシール(日本での通称は「赤盤」)として録音をリリースします。当CDでは、そのビクター時代の録音を復刻。アルバム前半にはクラシック音楽の小品を収録し、後半にはアメリカ市場を意識して、当時愛唱されていたポピュラー・ソングなどの演奏が収められています。モーツァルトのロンドでは、速い主部における無窮動風のスピード感とテクニックの冴えが中間部における典雅な歌と見事な対比を形作り、チャイコフスキーやヴィエニャフスキ、ピエルネなどの小品では自在なイントネーションとポルタメントの使用などにより、かなり濃密な情感の表現を聴かせます。ポピュラー・ソングはカルーソーらが愛唱していたものですが、シュメーは彼らの模倣に留まることなく、ヴァイオリンらしいイントネーションや重音の使用によって聴きがいのある小品に仕上げました。
彼女のビクターでの録音は1929年の世界恐慌発生を受けて終わりを告げてしまいますが、その後に収録された唯一の音源が当アルバムの最後に収められた「春の海」。1932年に日本を訪れたシュメーは宮城道雄の演奏する箏に強い関心を示し、箏と尺八のために書かれた彼の作品「春の海」の楽譜を借り受けると、一夜でヴァイオリンと箏のために編曲したと伝えられています。二人の共演で残された当音源が彼女の生涯最後の正規録音となりました。欧米の一流演奏家の来日がまだ珍しかった当時、この「春の海」はいわゆる「West meets East」の先駆的な例であると同時に、日本の伝統音楽やその楽器を「遅れたもの」と見ることなく二重奏としてとりあげたところに、シュメーの開かれた心を感じることができます。1940年代に入るとシュメーの消息は途絶えてしまいますが、先にリリースされたHMV録音集のブックレットによれば、その後も日本の音楽家が何度もパリのシュメー宅を訪れていたと記されており、心温まるエピソードとなっています。
(ナクソス・ジャパン)
【曲目】
1-2. ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685-1759):ヴァイオリン・ソナタ第6番 ホ長調より
1. 第1楽章 アダージョ
2. 第2楽章 アレグロ
録音:1925年1月28日 原盤:Victor 6497 (matrix C 31809)
3. ヨーゼフ・ハイドン:ピアノ・ソナタ ハ長調よりメヌエット(ハルトマン編)
録音:1925年11月9日 原盤:Victor 6609 (matrix CVE 33771)
4. ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791):
ハフナー・セレナード K. 250よりメヌエット(クライスラー編)
録音:1925年1月28日 原盤:Victor 6497 (matrix C 31812)
5. フェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847):春の歌
録音:1926年12月2日 原盤:Victor 1242 (matrix BVE 37066)
6. ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893):夜想曲 嬰ハ短調(ハルトマン編)
録音:1925年11年11月9日 原盤:Victor 6609 (matrix CVE 33770)
7. アンリ・ヴュータン(1820-1881):セレニテ Op. 45 No. 5
録音:1925年11月9日 原盤:Victor 1242 (matrix BVE 31863)
8. アルフレード・ダンプロージオ(1871-1914):ロマンス ニ長調 Op. 9
録音:1924年4月21日 原盤:Victor 6473 (matrix C 30001)
9. フェリックス・ボロフスキ(1872-1956):崇拝
録音:1924年4月21日 原盤:Victor 6473 (matrix C 29424)
10. フランシス・トーメ(1850-1909):葉陰にて
録音:1927年1月19日 原盤:Victor 1228 (matrix BVE 29429)
11. ガブリエル・ピエルネ(1863-1937):セレナード Op. 7
録音:1927年12月29日 原盤:Victor 1302 (matrix BVE 41713)
12. エンリコ・トセッリ(1883-1926):セレナード Op. 3 No. 1
録音:1927年12月29日 原盤:Victor 1302 (matrix BVE 41712)
13. ジェームズ・ブランド(1854-1911):懐かしきヴァージニア
録音:1931年4月15日 原盤:Victor 1552 (matrix BVE 53011)
14. サーロー・リューランス(1878-1963):ミネトンカの湖畔
録音:1926年12月3日 原盤:Victor 1228 (matrix BVE 29428)
15. チャールズ・マーシャル(1857-1927):僕を呼ぶあなたの声が聞こえた
録音:1926年12月2日 原盤:Victor 1291 (matrix BVE 37063)
16. ジェームズ・キャロル・バートレット(1850-1929):夢
録音:1929年4月25日 原盤:Victor 1442 (matrix BVE 51662)
17. ウェステル・ゴードン:One Little Dream of Love
録音:1925年11月10日 原盤:Victor 1132 (matrix BVE 31865)
18. ギィ・ダルドロ(1858-1936):ビコーズ
録音:1931年4月15日 原盤:Victor 1551 (matrix BVE 53005)
19. ヴィクター・ハーバート(1859-1924):ジプシー・ラヴ・ソング
録音:1929年3月1日 原盤:Victor 1402 (matrix BVE 49831)
20. ハーバート:キス・ミー・アゲイン
録音:1929年2月4日 原盤:Victor 1402 (matrix BVE 49833)
21. レジナルド・デ・コーヴェン(1859-1920):Oh, Promise Me
録音:1927年12月30日 原盤:Victor 1328 (matrix BVE 41715)
22. ヘイドン・ウッド(1882-1959):ピカデリーのばら
録音:1926年12月2日 原盤:Victor 1291 (matrix BVE 37062)
23. ウッド:愛する庭のばら
録音:1927年12月30日 原盤:Victor 1328 (matrix BVE 41716)
24. 宮城道雄(1894-1956):春の海(シュメー編)
録音:1932年 原盤:HMV 13220 (matrix JVE 4374/75)
【演奏】
ルネ・シュメー(ヴァイオリン)
アーサー・レッサー(ピアノ)…1、2、4
ハリー・カウフマン(ピアノ)…3、6、7、17
ワルデマール・リアコフスキー(ピアノ)…8、9
アンカ・セイドロヴァ(ピアノ、ツィンバロム)
…5、10-16、18-23
宮城道雄(箏)…24
復刻プロデューサー: Eric Wen
復刻エンジニア:Raymond Glaspole
マスタリング: Andrew Walter

輸入盤CD
1920年代のフランスを代表するヴァイオリニストで日本にも所縁のあるルネ・シュメー。稀少な復刻CDが登場。
ルネ・シュメーは1887年にフランスのブローニュ=シュル=セーヌ(現ブローニュ=ビヤンクール)に生まれた女性ヴァイオリニスト。パリ音楽院で学び、卒業するとコロンヌ管弦楽団のソロ奏者に抜擢され、やがてその名声は国際的に広まります。1904年、17歳のシュメーはヘンリー・ウッドのオーディションでラロのスペイン交響曲を演奏して彼を魅了し、プロムスに抜擢。以後、この曲は彼女の十八番になってゆきます。その後はベルリンでニキシュと、ウィーンではマーラーと共演、1921年にカーネギーホールでサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番をメンゲルベルク指揮で演奏した際は「フランスのクライスラー」と評判になりました。
シュメーは1932年に訪日して演奏会を行った他、箏奏者・作曲家の宮城道雄と共演。彼の「春の海」を録音したこともあり、日本で人気がありました。しかし彼女は1938年に国際的な音楽シーンから姿を消してしまいます。1940年代にはパリで散発的にラジオ放送に出演したものの、その後は引退同然となり、足取りもほとんど知られていませんが、当CDに付されたTully Potterの解説によれば彼女を慕う日本の音楽家たちが時折訪れていたとのこと。1977年に90歳の誕生日を目前にして亡くなりました。
シュメーの正規録音は1920年から1926年の間に集中しています。この復刻盤で聴く演奏は非常に力強く、推進力のある緩急自在かつ情熱的な節回しは、録音から100年の時を経て聴く人を惹きつけることでしょう。十八番のスペイン交響曲が3つの楽章しか録音されなかったのは惜しまれますが、サン=サーンスの序奏とロンド・カプリチオーソやヴィエニャフスキの華麗なポロネーズなどに聴く、豊かなポルタメント、細かいヴィブラート、切れの良いスタッカートなどに「チャーミング(魅力的)でスタイリッシュ(かっこいい)」というヘンリー・ウッドの言葉が実感されます。シュメーの演奏だけを集めた復刻盤は国際的に見ても非常に珍しく、Biddulphならではの企画です。
(ナクソス・ジャパン)
【曲目】
1. フリッツ・クライスラー(1875-1963):プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ
録音:1920年7月16日
原盤:HMV 3-07920 (matrix HO 4493 af)
2-5. ジュゼッペ・タルティーニ(1692-1770):
ヴァイオリン・ソナタ ト短調「棄てられたディドーネ」 Op. 1 No. 10
録音:1920年8月16日、1921年1月17日*
原盤:HMV 3-07919, 3-07921、5-7931* (matrix HO 4492 af, 4494 af and 6041 ae*)
6. アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741):協奏曲 イ短調 Op. 3 No. 6 - ラルゴ
録音:1922年11月3日
原盤:HMV 5-7989 (matrix Bb 2089)
7-8. ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685-1759):ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ長調
録音:1926年8月30日
原盤:DB 964 (matrix Cc 8897)
9. ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809):交響曲第96番 - メヌエット(ブルメスター編)
録音:1923年7月12日
原盤:HMV DA 530 (matrix Bb 3262)
10. ヨハン・ネポムク・フンメル(1778-1837):ワルツ Op. 91(ブルメスター編)
録音:1923年7月12日
原盤:HMV DA 531 (matrix Bb 3263)
11. カール・マリア・フォン・ウェーバー(1786-1826):ワルツ J. 147(ブルメスター編)
録音:1920年7月16日
原盤:HMV 5-7905 (matrix HO 5783 ae)
12-14. エドゥアール・ラロ(1823-1892):スペイン交響曲 Op. 21
録音:1921年1月14日
原盤:HMV 3-07936/38 (matrices HO 4497/99 af)
15. ラロ:ヴァイオリン協奏曲 ヘ長調 Op. 20 - ロマンス
録音:1921年1月14日
原盤:HMV 3-07935 (matrix HO 4496 af)
16. ズデニェク・フィビク(1850-1900):詩曲 Op. 44 No. 14(クーベリック編)
録音:1922年7月10日
原盤:HMV DA 419 (matrix Bb 1636)
17. アシル・シモネッティ(1857-1928):マドリガーレ
録音:1923年7月12日
原盤:HMV DA 530 (matrix Bb 3261)
18. カミーユ・サン=サーンス(1835-1921):セレナード Op. 15
録音:1923年7月12日
原盤:HMV DA 531 (matrix Bb 3264)
19. サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ Op. 28
録音:1925年9月28日
原盤:HMV DB 887 (matrix Cc 6789/90)
20. ヘンリク・ヴィエニャフスキ(1835-1880):華麗なポロネーズ イ長調 Op. 21
録音:1925年10月9日
原盤:HMV DB 964 (matrix Cc 6788)
21. エマニュエル・シャブリエ(1841-1894):アルバムの綴り
録音:1926年8月23日
原盤:first issued on DA 812 (matrix Bb 8867)
22. ガブリエル・グロヴレーズ(1879-1944):子守歌
録音:1926年8月23日
原盤:first issued on DA 812 (matrix Bb 8868)
23-24. マヌエル・デ・ファリャ(1876-1946):
23. スペイン民謡組曲 第1番 ムーア人の織物
24. スペイン民謡組曲 第6番 ホタ
録音:1926年8月26日
原盤:DA 814 (matrix Bb 8887 & 8890)
25. エデ・ポルディーニ(1869-1957):踊る人形
録音:1926年8月30日
原盤:DA 811 (matrix Bb 8899)
26. フランツ・ドルドラ(1868-1944):思い出
録音:1926年8月30日
原盤:DA 811 (matrix Bb 8898)
【演奏】
ルネ・シュメー(ヴァイオリン)
マルグリート・デルクール(ピアノ)…1、2、4、5、7、8、11、21-26
アイヴァー・ニュートン(ピアノ)…3
ハロルド・クラクストン(ピアノ)…6、12-16、19、20
ジェラルド・ムーア(ピアノ)…9、10、17、18