norinha
ブラジル音楽を自然体でポップスへと昇華させるシンガー
90年代以降、MONDO GROSSOやテイ・トウワ、最近ではorange pekoeらの活動でもあきらかなように、日本のポップスに対してブラジル音楽からさまざまなアプローチがなされてきた。インディーズ界では、ブラジル音楽の新解釈『TOKYO BOSSA NOVA』シリーズが連続してスマッシュ・ヒットを飛ばしている。また、草の根レベルでも、各地で数多くの関連イヴェントが開催され、この動きが短期的な現象として収束するようなものではないことを証明している。6月25日に新作『aquarela』をリリースするnorinha(ノリーニャ)も、そんなブラジル音楽を独自の解釈でポップスへと昇華させているアーティストのひとりだ。クラブ・ミュージックやジャズの要素を取り入れ、クールさと瑞々しさが絶妙なバランスで成り立っている彼女の音楽は、ヘヴィー・リスナーのみならず、多方面から高い評価を得ている。彼女は、父母の影響で幼い頃からブラジル音楽、特にボサノヴァに親しんできたのだという。
「幼い頃から、家ではいつも音楽がかかっていたんですよ。そのなかには、クルセイダーズもあったし、ビートルズもあった、もちろんボサノヴァも含まれていて。その影響もあって、いつのまにかボサノヴァのリズムを聴くと体が自然に反応するというか、そういう体質みたいなものになってしまったんです(笑)」
ブラジル音楽を身近なものとして育ったnorinhaは、クラシック・ピアノを学んだ経験をもとに、大学の軽音サークルに加入する。そこでは「知らなかったいろんな音楽を知ることができた」という。が、彼女はカタログ的に音楽を消費することなく、常に音楽と自然に接してきた。
「渋谷系ってどんなアーティストを指すのか知らないんです。たぶん、そう呼ばれているアーティストの音楽を聴いてはいるんだけど、そういう意識で聴いたことはないですね」
このコメントは、音楽に対するnorinhaの姿勢を表す象徴的な言葉ではないだろうか。そんな彼女が目指している場所は、決して特定の人に向けられてはいない。
「私のなかでは、ジャンルに対する特別なこだわりはないんですよ。聴いて〈あ、いいじゃん〉と思ってもらえればそれで良いというか。ヘタに難しいことをやりたくないんですね。いまはそのバランスを試行錯誤している状態なのかも。ただ、自分が日本人である以上、日本語で歌うということにはこだわりたいですね」
昨年発売されたミニ・アルバム『Livre』には、大貫妙子“海と少年”のカヴァー、新作ではシュガーベイブ“パレード”のカヴァーが収録されている。どちらも、〈日本語のポップス〉として後世に影響を及ぼした曲だ。クロス・オーヴァー的にあらゆるジャンルを飲み込み、最終的な表現形態として辿り着いた場所がポップスだったという点で、本作は80年代のシティー・ポップとの共通点があるような気がしたのだが「実は、そのへんは自分では聴いてないんです(笑)」とのこと……。がしかし、norinhaの奏でる〈ポップス〉は、見え方は違えどそれらの原曲とはどこか地続きで繋がっているような気がしてならない。
※コメント中に登場する新作『aquarela』の発売日は
6月25日に延期となりました。ご了承ください
・『aquarela』収録曲
1. 渚へ(試聴)
2. サザン・スコール ~Southern Squall~(試聴)
3. パレード
4. ロケット・ロマンス(試聴)
5. la!(試聴)
6. 歌う魚(試聴)
7. In the Wee Small Hours of the Morning
・『Livre』収録曲
1. Prólogo
2. ラジオの恋人(試聴)
3. Tea For You(試聴)
4. 毎日がパーティみたい(試聴)
5. O meu Brasil(試聴)
6. 海と少年
7. citrus(試聴)