K.P.M.
キウイ・パパイヤ・マンゴーズ? ジャマイカのグルーヴと清涼感ある歌の出会いによって生まれた極上レゲエ・ポップ
左から、廣瀬拓音、中谷マンゴー、大橋キウイ、永田真毅
中原めいこが1988年にリリースし、スマッシュ・ヒットを飛ばしたシングル“君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね”という曲を知っているだろうか? 30代以下の世代にとってはおそらく、「あー、なんとなく知っている」という〈記憶の残骸〉程度の認識をされているんじゃないかと思う。9月23日に『温帯ブギー』でデビューする現役大学生バンドK.P.M.は、大学のサークル〈中南米研究会〉で結成された4人組。「バンド名にそんなに意味はないんですけど、なんかあの中原めいこの曲がむちゃくちゃ好きだったから」(廣瀬拓音、ベース)という理由でバンド名を〈キウイ・パパイヤ・マンゴーズ〉とし、それを省略してK.P.M.というバンド名となった。
メンバーが属しているサークル〈中南米研究会〉では、ジャマイカ及びカリブ海の音楽が好きな人が集まり、日夜熱い音楽理論を戦わせている……というわけでもないようだ。
「サークル名は〈研究会〉なんですけど、別に真面目に研究をしているわけじゃないんです。なんとなく(サークルの)部室がジャマイカみたいな感じになればいいと思っているような(笑)」(永田真毅、ドラム)という、ジャマイカよろしくゆるーい雰囲気のサークルから生まれたK.P.M.の音楽は、レゲエを母体とした、これまたゆるーい音楽だ。裏打ちのビートとこもった音の沈むようなベース、そこに浮遊感のある女性ツイン・ヴォーカルのハーモニーがなんともスウィートにせつなく響く。この、レゲエの持つ〈気持ちよさ〉のツボを押さえつつもコンテンポラリーでハイブリッドな音楽はどのようにして完成したのだろうか。
「ジャマイカの音楽は小学校の時からずっと好きで聴いているんですけど、僕はそれだけじゃなくて民謡なんかも聴くんです。レゲエもジャマイカ民謡みたいじゃないですか(笑)。それに、自分が好きなものをそのままコピーしてもしょうがないと思っていて。要素としてレゲエの手法が出てしまっただけです。ポップスとして多くの人に気楽に聴いてもらえたら嬉しいですね。聴いて気持ちが良かったら別にレゲエじゃなくてもいいと思うし」(廣瀬)。
レゲエに対して距離を保ちつつ、〈単純に手法として〉利用できるのは、彼らにとってのレゲエがあらゆる選択肢のうちの一つでしかないということの証明だろう。
「僕の世代はレゲエという音楽がいつでも手の届く場所にあったので、簡単に手に入れることができた。もっと上の世代の人たちと比べるとレゲエという音楽に対して冷静な視点を持っているんじゃないかと思います」(廣瀬)。
K.P.M.の〈顔〉とでも言うべき2人の女性ヴォーカル、大橋キウイと中谷マンゴーは自身のデビューについてどう思っているのだろう?
「人前でライヴをやるようになってからまだ1年くらいしか経ってないんで、正直なことを言えばまだ実感はないですね。CDが出るっていう話を聞いても、『えっ?』っていう感じで(笑)。元々レゲエが特別好きだったわけでもないんです(笑)」(大橋キウイ)。
「……私にとってがはじめて経験することばかりだったので、今回は全部教えてもらったようなもので……。でも、与えられた時間の中ではいいものが作れたんじゃないかと思ってはいます」(中谷マンゴー)。
音楽に対し、柔軟かつ貪欲な姿勢を持つ廣瀬&永田と、自身の音楽活動にまだ自覚的ではない大橋&中谷。誰かがちょっとつつけば崩れそうなこのアンバランスさが、ジャンルを意識せずともすんなりと耳に入るK.P.M.のマジックを生み出しているのかもしれない。
『温帯ブギー』
1.Let's start makin' LOVE(試聴する♪)
2.光る風(試聴する♪)
3.じたんだ(試聴する♪)
4.気付けば夕暮れ(試聴する♪)