mopsy flopsy
ジャズとブラジル音楽をポップに折衷させた平均年齢23歳の若者たち
11月4日にファースト・アルバム『a beginners guide to mopsy flopsy』をリリースした平均年齢23歳の若者たち、mopsy flopsy。〈イヴァン・リンスの曲をリッキー・リー・ジョーンズやリンダ・ルイスが歌ったかのような〉と評されるように、彼らの楽曲は多彩なリズムとメロディアスなヴォーカルが絡み合っている。だが、本作を作る上で彼らの頭にあったのは、ジャズ~ブラジル音楽の持つ多彩で巧妙なリズムを使ってなにができるのかを探る……といったようなコンセプトではなく、より衝動に近いものだったようだ。
「音楽的に〈こういうことがやりたい〉というのはなかったんです。大学在籍中に白石なつみの声を聴いて、なによりもまず歌いたいんだなっていう気持ちがストレートに伝わってきた。彼女はテクニックを持っているからといって自分に酔ってしまうようなことがなくて、ただ届けたいという気持ちを感じる。mopsy flopsyでは、その〈歌いたい〉という気持ちをサポートすることがひとつの目的なんです」(田尻有太、キーボード)。
田尻の言葉にも触れられているように、mopsy flopsyの音楽を最も特徴付けているのは、白石なつみの表情豊かなヴォーカルだ。伸びやかでふくらみがある声の奥に潜む無垢な感覚は、音楽の価値が相対化され〈マニアックな音楽リスナー〉ですらマニュアル化している現代において貴重なものなのかもしれない。
「私は音楽が好きというよりも歌うことが好きなんです。洋楽なんか全然知らなくて、大学に入ってから〈音楽っていっぱい種類があるんだな〉ということを知ったくらいで(笑)。今でも、あれもこれも聴こうという気持ちはほとんどないですね」(白石なつみ、ヴォーカル)。
アコースティックな音色を基調としていることや、楽曲の耳触りの良さから、彼らのことを〈カフェ・ミュージック〉的なユニットと捉える人もいるだろう。
「たまたま今ある曲がライヴハウスよりはカフェのほうが合っているからカフェでライヴをすることが多いけれど、そこにこだわっているわけではない。CDを聴いて、僕らのことを〈おしゃれさん〉だと思っている人もいるかもしれないけれど、ライヴに来るともっと生々しいことをやろうとしているのがわかるはず。それを確かめに来てほしいですね」(田尻)。
元々同じ大学の音楽サークルを介して知り合い、現役大学生のメンバーも在籍しているということもあってか、メンバー間でワイワイ話しているのを見ると、そのまま大学サークルの延長のようにも思えてくる。
「レコーディングは合宿みたいで楽しかった(笑)。でも、音楽は真剣です。自分がなにを伝えるのか、伝えたいのかを、ちゃんと考えていきたいと思っています。音的な面でどういう方向に行きたいのかとゆうのは、まだぼやけているところもあるんだけど。それはこれからやっていく中で考えていきたい。まず、自分たちがやっていて楽しいのが基本だと思っていますが、そこからさらに聴いてくれる人たちに何かが残ればとても嬉しいです」(白石)。
「確かにサークル乗りはあるのかも知れない。音を出して楽しむっていう、いい意味でのサークル乗りは今後も残していきたいです」(田尻)。
『a beginners guide to mopsy flopsy』で彼らは初々しい一歩を踏み出した。タイトルどおりの〈入り口〉となる本作には、彼らの静かな衝動が充分に詰まっているはずだ。
mopsy flopsy『a beginners guide to mopsy flopsy』
1.海ときみ (試聴する♪)
2.ラヴ・シンコペーション
3.ココロバネ
4.ゆうのほ
5.ゆらゆらり (試聴する♪)
6.そばに