ala
ソウルもロックも皮膚感覚で融合させる7人組が放つフル・アルバム
ここ数年、パンク/ギター・ロック的な地点から出発した多くのバンドが、様々なジャンルの音楽をどん欲に取り込み、どんどん雑食的になりつつある。このことは、現在の日本のインディーズ・シーンにおいて、最も面白いトピックと言っていいんじゃないだろうか。2ヴォーカルと2ホーンを擁する7人編成の大所帯グループ、alaもまさにそんな流れの中から浮上してきたバンドだ。ソウル・ミュージックの持つメロウでファンキーな感覚を巧みに消化したサウンドが人気を呼び、若いリスナーからの絶大な支持を獲得している彼らも、その原点にあるのは、スカコアやメロディック・パンクが高らかに鳴り響いていた'00年前後のシーンの風景だった。
「最初はソウルっぽい部分ってあんまりなかったんですよ。バンドを始めた時からホーンは入れたかったんですが、結成の頃にイメージしてたのは、例えばスキャフル・キングのようなサウンドでした。バンドを続けていく中で、徐々にソウル的な要素が入り込んできたんです」(荒井祐樹/ヴォーカル、以下同)
もともと、スティーヴィー・ワンダーなどのブラック・ミュージックを好んで聴いていたという彼ら。音楽性の変化は特別なきっかけがあったわけではなく、そんなメンバーの嗜好が素直に反映されていった結果なのだとか。
「バンドのコンセプトを決めたりすることってあまりないんですよね。僕らの場合、自分たちが〈気持ちいいな〉とか〈かっこいいな〉って思ったものをやってるだけなんですよ。好きなものをすぐ形にしてみたいという。いい加減に聞こえるかもしれないですけど(笑)。でも理論的過ぎたり、意識し過ぎたりしても良いものはできないんじゃないかと思うんです」
皮膚感覚だけを基準にして、あくまで自然体でやっていく。この軽快なスタンスを貫いているからこそ、彼らの音楽には風通しの良いポップな感触があるのだろう。この度リリースされた初のフル・アルバム『Jam of the year』からも、ブレや迷いは一切感じられない。よりメロディアスでグルーヴィー。自分たちの快楽原則に忠実なヌケの良いサウンドが展開されている。
「今回も、こういう方向にしようというのは特になかったんです。ただソウルやダンスものを聴く機会がこれまで以上に増えてるので、その影響は出ましたね。あと、アヴァランチーズみたいなバンドもすごい好きなんですよ」
アヴァランチーズと言えば、無数のサンプル・ネタを組み合わせて、ハイブリッドなポップ・ミュージックを作り出してしまうバンド。軽快なギター・リフで始まった曲が、気が付くと流麗なディスコに転換していたり……と、1曲の中に様々な風景を盛り込んでいくalaの雑食的なセンスは、確かに彼らと通じるところがあるかもしれない。
「全く違うジャンルの要素を混在させるのが面白いんですよね。ただ、それが不自然につながってたら駄目だと思うんです。だからスムーズな展開が見つかるまで、アレンジを何回も練り直す。うまくはまったときは、めちゃくちゃ気持ちいいですよ。それはアルバム全体の流れにしても一緒なんで、曲順はものすごい悩みました。構成を考えてスキットやアウトロも入れましたし。仕上がりにはすごく満足してます。レコーディングは、毎回ベスト・アルバムを作る気持ちで臨んでるし、その都度納得の行くものしか出してないんですけど、今回は、今までで一番良いものができたなあと」
当人たちの満足も至極当然。『Jam of the year』はニクいくらいの完成度を誇るファースト・アルバムとなった。本作を引っさげ、彼らは年明けより全国31ヶ所をまわる怒涛のロング・ツアーへ繰り出す。アルバムの音はライヴの現場で、また違った輝きを見せてくれるはずだ。
ala『Jam of the year』
1.spring in my step
2.shiny
3.music and coffee
4.lilt sign
5.swinging love
6.Point of view
7.BUD (skit)
8.I wanna hear from you
9.VIVACITY
10.SOUL SERIES (skit)
11.room82
12.QUIET GROUND
13.outro