インタビュー

Bad Brains

この速さと重さ、そして黒いグルーヴはいったいなんだ? オリジナル・メンバーを再集結させて、ブラック・パンクの始祖が最先端に躍り出る!

俺たちは〈ひとつ〉として動いてるんだ


  バッド・ブレインズがこれまでに残してきたもの、それがいまなお多くのバンド、そしてアーティストに引き継がれているのは確かなことだ。彼らの登場は、それ以降のブラック・パンク/ハードコア・パンク・シーンへはもちろんのこと、90年代初頭のミクスチャー・ロック勢、はたまたその影響を露わにしてリミックスをオファーしたリル・ジョンのようなヒップホップ・アーティストにまで大きな衝撃を与えた。

「自分たちがやってきたことに影響されたと言ってもらえるのは、最高に嬉しいことだよ」。

 そう語るのは、ベーシストのダリル・ジェニファー(以下同)。いきなりだが、ここで彼らの歴史を少しばかり遡ることにしよう。前身となるジャズ・フュージョン・バンド、マインド・パワーが活動を開始したのは75年のこと。その後、音楽性が徐々にパンクへと移行していき、バンドはラモーンズの曲“Bad Brain”を由来にバッド・ブレインズと改名した(ただし、ここでのバッドはパワフルを意味している)。では、なぜ彼らはパンクを演奏するようになったのだろうか?

「確かに最初はフュージョンだったけど、パンクの音が聞こえてきて、それを自分たちもやりはじめて……その後は知ってのとおりだな。自分たちのパンクな面が自然と出てきたんだ。(当時)黒人4人がパンクをやっているバンドなんて世界中どこを探してもいなかったし、とても斬新なことだったんだよ」。

 また、パンクのなかにもブラック・ミュージック独特のグルーヴ感が込められていることについては、「俺たちは本当にたくさんの音楽から影響を受けている。自分たちのグルーヴは自然のもので、生まれつき備わっているものだ」と話す。

 改名したバンドに、稀代のカリスマであり、数々の伝説と神懸かったノドを持つヴォーカリスト、いや〈スロート〉のH.R.が加入することになる。

「誰しもH.R.みたいに自由に生きたいと思ってるんだ。とてもユニークな人間だよ。そうした意味でみんな彼を尊敬し、憧れの対象になるんだ」。

 USハードコアの始祖とも言われる彼らが、同時にブラック・パンクもしくはアフロ・パンクの元祖と呼ばれる由縁は、先ほど本人が語ってくれたように〈黒人によるパンク・バンド〉という斬新さにある。その後、初期バッド・ブレインズはラスタファリズムのもとにレゲエ・サウンドへの思いを一気に深め、ファースト・アルバム『Bad Brains』をリリースした82年頃には、ハードコアの曲とレゲエ・ナンバーを並列に扱うようになった。

「自分たちは偉大なるジャーに導かれてるんだ。最初オーディエンスはレゲエとパンクを混ぜることにビックリしたかもしれないが、でもそれらは自分たちの一部なんだ。ジャーのスピリットがレゲエとパンク、その他すべてを繋いでいるんだ。それと、これだけは言わせてくれ。音楽は感情的でなかったり、エネルギーを有してなかったら失敗なんだよ。俺たちは数人のミュージシャンが集まったグループとしてじゃなくて、〈ひとつ〉として動いてるんだ」。

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掲載: 2007年08月02日 16:00

更新: 2007年08月02日 17:29

ソース: 『bounce』 289号(2007/7/25)

文/池田 義昭