BLACK FRANCIS
ホントはピクシーズの新作用に作られた(?)、ブラックさんのソロ・アルバム!
ピクシーズの再結成ツアーをドキュメントしたDVD「Loud Quiet Loud」や、ソロ・ワークスをまとめたベスト盤『93-03』などキャリアを総括したような作品のリリースが相次ぐなか、ついにはピクシーズ時代の名前=ブラック・フランシス名義でのニュー・アルバム『Bluefinger』が到着した。ソロになってからは長らくフランク・ブラックを名乗っていただけに、〈もしや原点回帰か?〉とも思えるが、今回はオランダ人ミュージシャン/画家のハーマン・ブルード(2001年没)に捧げられたコンセプト・アルバムとのこと。
「僕は昔からずっと〈新しい音楽〉に興味を持てないできた。パンクやニューウェイヴの時代にもジェスロ・タルを聴いていたくらい(笑)。最近になってようやくデーモン・アルバーンって才能あるな~って思ったほどなんだよ」と、音楽に向き合う時のポリシーを語ってくれたブラック・フランシスだが、意外なことに新作でモチーフとしているハーマン・ブルードは、かのリーナ・ラヴィッチの恋人でもあったアーティスト。〈セックス、ドラッグ&ロックンロール〉を地で行ったハーマンの人生に共感したブラックが、わずか数日で一気に録音したのだという。
「本当はピクシーズとしての新作になるはずだったんだけど(苦笑)」と話すブラック。ピクシーズの新作のために書かれた曲が急遽このソロ作へと活かされたそうだが、実際にピクシーズ再結成後の来日公演でも見せてくれたエッジーでささくれだった剥き出しの演奏を詰め込んだ内容である。一方で、どこかしらヒューマンな香りのするメロディーも印象的で、彼らしいダイナミックなロック・アレンジとの融和も見事に成功していると言えよう。
「僕の音楽の好みはクルクルと変わるんだ。それに僕の音楽にはいろんな側面がある。新しいことをやろうとしたわけではなく、そうやってあちこちにいくつかの小さな橋を架けた最初のバンドがピクシーズだったのかもしれないよ」。
ピクシーズの功績をこのように語るブラックだが、ソロとしてのキャリアを再開させた彼が今後どういう功績を残していくのか、楽しみでならない。