インタビュー

凛として時雨

常に限界突破を図る3人組が、深遠かつハイ・エナジーな初シングルを発表!!

  2007年に日本のロック・シーンを席巻した突然変異型の新世代バンドのなかでも、常に異質な存在感を放ち続けている凛として時雨。冷ややかな静寂とヒステリックな轟音が猛スピードで交錯する彼らのサウンド・スタイルは、このたびリリースされたファースト・シングル“Telecastic fake show”でも健在だ。

 「時雨って、2曲とか3曲のパッケージだとどういう風に聴こえるのかな?って思ったのがはじまりで。コンパクトな曲数で何かしらの世界観を見せられたら、と思ったんですよね。だから今回の作品は、聴いた感じではシングルっていうよりもミニ・アルバムに近いのかな、って思います」(Toru Kitajima a.k.a. TK、ヴォーカル/ギター)。

 メタリックなギターをフックに圧巻のパワー&テンションで突っ走る“Telecastic fake show”、激烈なベースラインと攻撃性剥き出しのドラミングがカオティックなグルーヴを生み出す高速ダンス・ロック・チューン“Re:automation”、ディレイを効かせたギターが〈僕と君〉〈君と記憶〉〈記憶と僕〉との境界を曖昧にしてゆくミディアム・ナンバー“24REVERSE”。それぞれ異なるベクトルながら完璧に振り切った感のある全3曲は、メンバー個々の〈限界突破〉の賜物らしい。

 「2曲目(“Re:automation”)のサビの前でドラムがドコドコいってるところがあるんですけど、手順とか考えると〈そこには絶対入れないでしょ〉っていうところに、彼(TK)は〈裏でハット入れて〉って言うんですよ(笑)。でも、すごい練習したら出来るようになったんですよね。いままで〈出来ない〉って思ってたフレーズが、意外と出来たりすることはけっこうありますね。自分としては思い掛けない部分が引き出されるというか」(Masatoshi Nakano a.k.a. ピエール中野、ドラム)。

 「私も、2曲目の間奏で弾いてたフレーズをレコーディングの時に変えることになって。録りながら(TKに)アドバイスをもらって、弾いてみるっていう。自分で考えたフレーズは大丈夫なんですけど、〈こんな感じで〉って言われてやったものは、後になると弾けないことが多いんです。そんなに難しいことをやってるわけじゃないのに、何でだろう(笑)?」(Miyoko Nakamura a.k.a. 345、ヴォーカル/ベース)。

 「弾き慣れないからじゃない? フレーズって、普通は自分の枠のなかから探すと思うんですけど、僕が外側からパッて何か言うと、2人から面白いものが出てきたりするんですよ。だから、僕だけ上手くならないんです(全員爆笑)。自分で切り拓いていくしかない(笑)」(TK)。

  確かなテクニックで録音されたフレーズたちは、TKの手でエディットされることによって曲の形を成していく。〈予測不可能な曲展開〉も時雨サウンドのひとつの特徴だが、その〈先が見えない〉感覚は、リスナーのみならず彼ら自身も共有しているものだという。

 「3曲目(“24REVERSE”)はデモがあったんですけど、あとの2曲はギターと歌だけがあって、コードを伝えながら演ってもらって録ってみて、の繰り返しでしたね。2曲目に関しては、録ったものを前後させたりとかホントに細切れで作業をしてたんで、僕も含めて最後までどこに向かってるのか謎なまんま(笑)。出来上がってみて、〈へぇ~、こうなるんだ〉っていう(笑)。特に僕以外の2人は、歌詞もメロもフィックスしたものを聴くのはマスタリング前後ぐらいですから。2人がスタジオから出ておにぎりとか買いに行ってるあいだに歌を入れるんですよ。で、戻ってくると原型が出来てる。2曲目とかはけっこう変わってたんじゃない?」(TK)。

 「うん。聴いた時は〈おぉぉぉ~! いいじゃ~ん!!〉って普通にアガった(笑)」(345)。

 「毎回、想像を超えてくるんですよね。自分は“Telecastic fake show”のサビもあり得ない手数を繰り広げてるんですけど(笑)、出来上がった曲には物凄くハマってて……あのフレーズがこう活きてくるんだ、っていう発見は多々ありますね」(中野)。

 発見どころか、聴き終えた後はしばらく放心状態になるほどの衝撃に襲われる本作。凛として時雨の格好の入門編であるが、それは同時に、非常に危険なシロモノであるということも意味しているのだ。

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カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2008年04月24日 23:00

更新: 2008年04月28日 20:55

文/土田 真弓