Jason Falkner(2)
いつも本能に従うようにしているよ
――でも、ポール・マッカートニーのアルバムに参加したことは、やはり特別な体験だったのでは?
「ああ。あれは本当に非現実的な体験だった。ポールからはビートルズに関する信じられないような話を聞かせてもらったよ! 誰だって夢なんじゃないかと何度も頬をつねらずにはいられない状況だよね(笑)。いちばんの思い出は、僕が作った『Bedtime The Beatles Vol.1』(ビートルズのインスト・カヴァー集)を彼に渡した時、彼が〈聴かせてもらうよ〉と言ってくれたこと。でも、実際聴いてくれるかどうかなんてわからないだろ? そしたら、その数日後、彼のほうから、どれだけ気に入っているかをとても興奮した口調で伝えてきたんだ。本当に聴いていないと言えないような具体的なコメントもいくつかくれた。彼は、〈この作品には、愛情とリスペクトが込められていると同時にビートルズ・ミュージックへの試みでもある〉と喜んでくれたんだ。信じられないだろ!?」
――ところで、ジェイソンの音楽はソング・オリエンテッドな作風とスタジオ・ワークを駆使した遊び心溢れるサウンドの組み合わせが特徴だと思うのですが、今回はストレートなパワー・ポップ・アルバムになりましたね。新作を作るにあたっては、どんな作品にしたいと考えたのでしょうか?
「作品を作る時は少し謎の部分を残すことが大切なんだ。歌詞にも抽象的な描写がたくさんあるけど、ちゃんとそれが音と結びつくようにしている。ヴィンテージの楽器もすごく好きで、僕の部屋はちょっとした古い機材の博物館みたいになっているんだ。僕が何でそういうものを好むかと言うと、僕にとっては音楽も含め、何でも自分の手で作り上げるというのがすべての基本だからさ。ヴァーチャル・シンセやプロトゥールスを使うと、音楽を作ったっていう実感が得られないんだよね。だから、いまでは60年代後半や70年代に流れていた素晴らしい音楽の要素を持ったアルバムを作ることも僕にとって挑戦のうちの1つになっている。そういうことも楽しいんだよね」
――新作には直感に従い、その時の心境を反映させたと言える部分もあるんでしょうか?
「いつも本能に従うようにしているよ。とは言え、自分で全部作っているから本能に従うしかないんだけどね(笑)! エンジニアも自分でやっているから僕のスタジオには本当に僕だけしかいない。このアルバムでは素材そのままを活かすオーガニックな部分と、宇宙空間みたいな未知の部分の間を歩いているんだ! この作品を聴いてくれる人には、メロディーをしっかりと聴いてほしいと真剣に思っているけど、同時に抽象的で曲に溶け込んでいる音の積み重ねやコード・ワークにも耳を傾けてほしいね。その2つを共存させることがアルバムを作るうえでいつも目標にしていることだし、どの作品でもそれが実現できるように取り組んでいるんだ」
――新作ではビー・バップ・デラックス(70年代に活躍した、〈早すぎたニューウェイヴ〉とも言えるグラム・ロック・バンド)の“Jet Silver And The Dolls Of Venus”をカヴァーしていますが、今回、なぜこの曲を取り上げようと?
「もうずっと何年もビー・バップ・デラックスのファースト・アルバム『Axe Victim』のファンだったんだ。いつもこの曲をカヴァーしてアルバムに収録できたらって思っていたんだけど、入れるのを忘れていたんだよね(苦笑)。それを、今回レコーディングの中盤に……ついに思い出したんだよ。ハハハ。『Axe Victim』は、素晴らしいアルバムだよ。デヴィッド・ボウイの〈Ziggy Stardust〉に影響を受けているみたいだけど、同じ頃の作品だからどっちが先とは言えないんじゃない……かな」
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