インタビュー

GARI(4)

タイトルが示す開放感とキャッチーさ

――冒頭の“OVER THE SUNRISE”からそうなんですが、ギターよりもシンセ・リフを中心に組み立てていったことと、上昇するようなコード展開を強調したことでかなり昂揚感溢れる作品になっていますよね。

「これまでやっていたラウド・ロックやミクスチャー的なアプローチだとシリアスなほうが曲との相性もいいので、ダークなコードを使いがちだったんですよね。だから、それの裏返しというのもあるのかな。アルバムのタイトルもそうなんですけど、色が明るくて、カラフルなものにしたかった。それは意識していましたね。不快感や〈何これ?〉っていうモヤモヤ感よりは、もっとスッキリした感じを与えていくような方向に向かっていきましたね」

――あと、これは的を外した指摘だったら申し訳ないんですけど、“Nu=DANCE”をはじめ、楽曲の随所に80年代の日本のソウル歌謡的なキャッチーなフックを入れていますよね? それこそラッツ&スターばりの。

「ああ、それは合ってると思いますよ。今回の作品を作る時には現在のエレクトロも聴いていたけど、同時に70年代や仰ってたようなソウルやファンクみたいな泥臭いものも聴いていたんです。あの時代の一度聴いたら忘れられないフレーズは採り入れていきたいってところがあったし、いま振り返ると、実際そういうふうに作ってました。あの時代になんとなく聴いていた曲って、ディスコ・ソングでも何でも、曲名を知らなくても曲自体は知ってる、っていう印象が強かった。それってまさに普遍的ってことだと思うんですよね。引っかかり具合やわかりやすさ。言葉を単に羅列しただけでもわかりやすく聴こえてしまうようなフレーズのキャッチーさは意識していたのかもしれないですね」

――“Battle?”でフィーチャーしているURALiさんについて教えて下さいますか?

「普段はヒップホップR&B的なものをやってるアーティストなんですけど、ここ最近のヒップホップやR&Bのアーティストがエレクトロに接近していることもあって、彼女もエレクトロ系のサウンドを模索していたみたいなんです。で、僕らもトラックメイカー以外のアーティストとのコラボを今回のアルバムで考えていたなかで知り合って、〈一回、自分たちの曲でやってみない?〉という感じで誘ってみたんですよね」

――アルバムは昂揚感と解放感に満ちたとてもポジティヴな作品になりました。サビのフックやフューチャリスティックなカラーなど、日本のバンドらしい独自性もあって、とてもオープンな作品になったと思います。これまで逆輸入バンド的な扱いが多かった感もありますが、この作品を機に日本でのリスナーも増えていくんじゃないでしょうか?

「海外での評価っていうのも、遠回しに〈日本じゃ売れてないですから〉って思われてるようで悔しいじゃないですか(苦笑)。僕らは〈日本人にはわからないから海外に出る〉って気持ちでやってるわけではないですし、むしろ日本で売りたいって気持ちはすごく強いんですよね。『COLORFUL TALK』はその入り口になる作品にしたいと思って作ったし、その思いが開放感や作品全体のキャッチーさに繋がっていると思うんで、ぜひ聴いてみてほしいですね」

――その力はあるアルバムだと思いますよ。

「それに、こんな時代だからこそ、おもしろい音楽に耳を傾けられるんじゃないかなと僕は思ってますから」

――へぇ。おもしろい意見ですね。それはどういうことですか?

「CDが売れなくなったっていうことには、実はいい面もあると思うんですよ。というのも、量産性の高いものより、個性的なアーティストの作品のほうが目立ちやすくなると思うから。100万枚売れる作品が多かった時代よりは、そういう作品が見えやすくなってますよね? 数年前は、3万枚売れたアーティストって全然目立たなかったけど、いまはすごく目立ちますし。おもしろいことをやろうってアーティストにとっては、いい時代なのかなって思います。突出した売れ方をする作品が減れば、フレッシュなものに目がいく可能性がありますから。そうなった時にもリスナーの人に聴いてもらえる、色のある作品を作れるようになりたいですね」

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カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2010年01月06日 18:00

文/佐藤 譲