インタビュー

エミ・マイヤー

「日本語はキレイな言葉」全編日本語で歌う。

エミ・マイヤーは、京都生まれのシアトル育ち。父がアメリカ人で、母が日本人というシンガー・ソングライターだ。昨年4月に日本でデビューして、新作『パスポート』は2作目になるが、今回は全編日本語で歌っている。子供の頃から日本語を話してきたけれど、英語とは異なり、ネイティヴではない。その日本語に対する不慣れさというか、初々しさがいい方向に作用して、歌詞の内容はもちろんのこと、弾き語り風からジャズ、レゲエなど、それぞれの曲調によってヴォーカルの表情が変わる。これがとてもいい。アルバムは、シンゴ・アンネンことShing02とのコラボレーションによってレコーディングされた。

「何かコンセプトがあって作り始めたわけじゃないの。アルバムを意識することなく、最初に彼と《君に伝えたい》という曲を作ったら、すごく良くて、気がついたら6曲も完成して。ならば、アルバムにしようと(笑)」

アルバム作りは、ここから出発して、全てにおいて自然な流れのままに進んだ。たとえば、サンフランシスコでのレコーディングも試しに1曲やってみたら、ベーシストを中心にミュージシャンが素晴らしく、ピアノの響きに適したスタジオの環境と腕のいいエンジニアがいて、最終的に3回もサンフランシスコに通い、計6曲をここでレコーディングすることになった。

「その時々に完成した曲をレコーディングしたので、3回もサンフランシスコに通うことになったんだけれど、それが反対にいいケミストリーを生むことになったと思う。スタジオではライヴ方式の一発録り。限りなくセッションに近い感じのレコーディングをしたので、演奏しながら自分でも楽曲に新たな発見をすることもあった。参加したミュージシャンは、誰も日本語が話せないけれど、敢えて歌詞の内容を説明することなく、タイトルや私の声のトーンなどからそれぞれに曲を解釈してくれた。それがいい相乗効果を生むことになったと思う」

歌詞は彼女が経験したこと、感じていることなどのトピックがベースになっているが、どれも詩的な表現で、見る角度によって語りかけてくることが異なる。

「英語と違い、ストレートな表現をせず、一行一行に俳句のような意味を持たせ、ラヴ・ソングのように聴こえる歌も実は比喩で、もっと大きなことをテーマにしていたりする。それが今回とても楽しかった。日本語で歌うのは大好き。音としてとてもキレイな言語だから」

意味を大切にしつつも、そこに溺れず、言葉の音としてサウンドとの調和にこだわり、感情に走りすぎていない。そこが儚げな中に感じる美しさだったり、イマジネーションを刺激されたりする理由だろう。エミ自身も

「自分の音楽に新たな発見をするが多い」と言っていたけれど、聴くたびに〈あれ、こういう歌だっけ?〉という新鮮な感情が湧きあがってくる。ここがエミ・マイヤーというアーティストの計り知れない魅力だと思う。

 

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年03月31日 22:18

更新: 2010年03月31日 22:24

ソース: intoxicate vol.84 (2010年2月20日発行)

interview & text : 服部のり子