インタビュー

片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティ 『サカサマデアル』

 

遊びゴコロと果敢な挑戦者魂で新たなサウンドを手に入れたニュー・アルバム『サカサマデアル』完成!

 

 

 

黒猫チェルシーとかOKAMOTO'Sとか。ここ最近の〈2010年代型ロックンロール黄金世代〉の活躍を見るにつけ思い出していたのは、京都在住の5人組だ。若さ溢れる連中の演奏は確かに眩しい。だが、ちょっと待て、と。その前にちょい上世代のコイツらが種をまいてはいなかったか、と。

「僕らには僕らなりの自負というか、〈ひと味違うところを見せてやりたい〉というような思いはありますよ……とはいっても、もちろん、黒猫チェルシーとか若い連中からは十分刺激を受けてるんですけどね(笑)」(片山尚志、ヴォーカル:以下同)。

若い世代の台頭を素直に認めつつも、先輩として負けてはいられない。というわけで、結成から早10年を数える片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティが、風格ある新作『サカサマデアル』を届けてくれた。フル・アルバムとしてはこれがまだ2枚目ながら、リズム&ブルースをルーツに持つやさぐれガレージ・ロックというイメージからはかなり逸脱した、洗練されたアレンジの曲やフォーキーなタッチの曲などが存在感を放つ振れ幅の大きな一枚だ。

「〈せーの、ドン!〉で作るような曲はいつでもできる。でも、それじゃバンドを続けて行く原動力にならないんです。だから何か新しいことをしたいというのは常に考えていたし、今回は特にその思いが強く出たかもしれない。僕らは一度作りはじめた曲は絶対に放り投げない、最後までひと通り作ってみるようにしてるんですけど、今回は曲作りの方法そのものを少し変えてみたんですよね」。

例えば、今回インタヴューに応えてくれた片山が、コンピューターを使って遊びながら作ってみた曲が発展したパターン──まるで嵐あたりに曲提供することを想定したかのような“空に穴あく夜にある”などはそういうプロセスから仕上がったかなりコンテンポラリーなナンバーだ。

「いまさらですけど、打ち込みっておもしろいなって単純に思えたんですよね。Perfumeみたいな曲やなー、こんなんできるんやーって遊びながらね。それがきっかけになってバンドで合わせてみたんです。ちょうどその頃、ディスコ・ファンクにハマっていたっていうのもあって、もちろん時間はかかりましたけど、いままでにはないリズム・パターンが出てきたんですよね」。

また片山は日頃、地元を中心に弾き語りライヴもコンスタントに行っているが、そこで披露していた、言わばソロ用の曲をバンド・アレンジで再現することにも挑戦。そこから誕生したのが、最後の曲“地球最期の朝がきて”だという。

「僕としては〈この曲をバンドでやるの?〉って感じだった。僕の弾き語りの曲って昔のURC系のフォークとかを土台にしてるから、バンドには合わないだろうって思っていたんですよ。勢いでドーン!って盛り上がる曲じゃなかったし。でも、ストイックに演奏に専念しながら仕上げてくれたメンバーの姿に最後は感動しましたね」。

その“地球最期の朝がきて”では〈愛してる〉というストレートな表現の歌詞が凛々しく響く。くるり以降の京都周辺人脈とも関西ゼロ世代周辺とも一線を画し、どこにも属さず吸収されることもなく10年間歩み続けてきた彼らがいま、新たな境地に入ったことを告げている曲なのかもしれない。

「ちょうど去年、社会的にも暗いニュースが続いていた時に、ふっと自分にもいつ何時不幸が訪れるかわからないと思ったんですね。すると、〈愛してる〉って言葉が素直に出てきた。で、思ったんです。清志郎さんもどんとさんもトータス松本さんも、俺が好きなミュージシャンって、攻撃的な側面も持ってるけど、〈愛してる〉ってことをちゃんと歌える人なんです。僕は彼らのようなミュージシャンを〈世捨て人系〉って呼んでるんですけど、僕もこの曲をレコーディングで歌い終えたときに、〈あ、ようやく立派な世捨て人になったな〉って感じましたね(笑)」。

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年04月28日 21:35

更新: 2010年04月28日 21:39

ソース: bounce 320号 (2010年4月25日発行)

インタヴュー・文/岡村詩野

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