XL MIDDLETON 『Middle Class Blues』
あの超メロウなクレイジー・エイジアンのご帰還だぜ!
いや~、しばしのご無沙汰だったな! オレの話じゃねえよ。そう、カリフォルニアはパサデナ出身の日系人ラッパー、XLミドルトンのことさ。フォーサム周辺で脚光を浴びて膨大な作品がドッと届けられ、2007年には来日も経験してDS455とのコラボも実現させてるから、日本でもすっかりお馴染みだよな。それ以外にも日本ではYZやDix-Tら、フランスではドッグマスター、イタリアではDJゾーン……と国境を越えて客演を繰り広げてきてたんだよ。そんなヤツもここ最近は音信不通で心配してたんだが、どうやらレーベルの運営や周囲の環境が不況の影響でいろいろ大変だったみたいだ。
「まあ人生の難局にぶつかったっていうかな。スタジオから一歩出ればあらゆる問題が待ち構えていて……ホーミーが差し押さえで家を失ったり、愛する人間が失業したり。そういうのって家の中にも影響してきて、例えばどうやって生活費を払うかで彼女と喧嘩になったりな。でも、いまは問題を整理して良い気分さ! 新作『Middle Class Blues』を出すことで先に進むこともできたからね」。
転んでもタダでは起きないというか、アルバムのテーマそのものを「標準的な中産階級の人間が直面しているブルース」に設定しているのも画期的だろ。何と言っても曲名が〈失業〉とかだからな。でも、XLの奏でる『Middle Class Blues』は安直な応援歌でも悲観的な嘆きでもない。いつも通りのフッド色を滲ませたソウルフルなファンク・サウンドさ!
「最大のチャレンジは今回のアルバムがいわゆる〈パーティー・アルバム〉じゃないことだったね。言いたい内容を言いつつ楽しく聴ける作品にした。それは達成できたと思ってるよ。だって“Unemployment”を聴いてみな、あれは踊れる曲だろ? アルバムはだんだん前向きな感じになって、最後の曲ではオレがブルースから脱出したことを象徴してるのさ」。
生音を活かした温かいファンクでシリアスなテーマをエンターテイメントに昇華させた『Middle Class Blues』。聴けば不況が飛んでいくかは知らねえが、最高にメロディアスで心地良いレイドバック・グルーヴが用意されてるってことはオレが保証するぜ!
▼関連盤を紹介。
左から、DS455の2007年作『Risin' To Tha Sun』(BAYBLUES/HOOD SOUND/ユニバーサル)、ドッグマスターの2008年作『Injection』(Doggy Phunk Palace)、DJゾーンの2008年作『The G Funk In Me』(California Funk)、DPZクルーの2008年作『Drama Dayz』(DPZ)
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掲載: 2010年05月24日 22:25
更新: 2010年05月24日 22:26
ソース: bounce 320号 (2010年4月25日発行)
インタヴュー・文/DGノックアウト