インタビュー

OKAMOTO'S 『10'S』

 

Okamoto's -A

そもそもが人を喰ったようなバンド名に、どこか策士的な匂いを感じる人がいるかもしれない。怪訝そうな顔をしてしまう人もいるだろうか。だが、まだ全員19歳とは思えぬこの4人の、音楽へのストレートな情熱と本気度の高さは半端ではない。ニュー・アルバム『10'S』ではザ・フーやルースターズの曲を取り上げているが、今年2月に京都で観たライヴでは村八分のカヴァーも披露。ロック・レジェンドたちへのリスペクトも生半可じゃなさそうだ。

「13歳くらいの頃、レイジが聴いてたんですよ。ちょうど『村八分ボックス』が出た頃でした」(オカモトショウ)。

「昔はライヴでよくやってたんです。村八分やストゥージズの頃のイギー・ポップとか、凶暴そうなところ、不良っぽいところにすごく惹かれますね」(オカモトレイジ)。

2000年代をまだ小学生の時代に迎えた彼らは、リバティーンズやジェットといった人気バンドを普通に聴く一方で、ニルヴァーナとドアーズのCDをどちらも〈旧譜〉として同時に買ったりと貪欲なリスナー生活を送っていたという。そして、次第にザ・フーやミーターズといったルーツを掘り下げるようになり……現在のようなアンファン・テリブル(恐るべき子供たち)になった。だが、彼らは単なるリヴァイヴァリストではない。『10'S』というアルバム・タイトルに表れているように、2010年代の新しい世代をレペゼンしていこうとする意識が強い。そこがこのバンドの持つ大きな可能性だろう。

「最初はやっぱり好奇心ですよね。このアーティストにもルーツがあるんだってことがわかって、もっともっと知りたくなるという。そういう楽しみ方も音楽にはあると思うんですよ。ただ、それを僕らは昔の音楽、古い音楽とは感じないんです。いまの時代の音楽同様に進化しているわけで。当時も新鮮だったけど、いまも新鮮。そういう意味ではこの時代に生きている耳で吸収してきたうえで、自分たちのヴォキャブラリーを加えてやってるんだって思います」(ハマ・オカモト)。

〈つまり、日本のロック史の新たな歯車になろうとしている?〉と訊ねると、4人は共に大きく頷き、「そうなりたい」と口を揃える。だが、〈奇を衒うことなくオーセンティックなロックンロールというスタイルを受け継いでいる自覚もあるか?〉という問いには、こう答えてくれた。

「ゼロから新しいことをやっているわけではないですよね。ただ、いまの自分たちがやっている以上は何か新しいことをやっているんじゃないかって気がします。あと、僕らだけじゃなく黒猫チェルシーとかもそうだけど、同じ世代のみんなでこの時代を作ってるって実感がありますね」(ショウ)。

「こういう音楽をやっている以上は自分たちで新たに伝えていかないと、という使命感はある。でも、それ以上に10代を代表しているという意識もあるんです。そういう意味ではすごく確信的に音楽に向き合っているのかもしれませんね」(レイジ)。

中古レコード店でアナログを買うのが好きだという彼ら。A面B面という感覚、曲順にこだわる姿勢もそんなLP時代へのシンパシーの表れだろう。しかしながら彼らの作品には時代を切り拓き、突破し、流れを作っていこうとする鼻息の荒さがある。

「リヴァイヴァルという意識もないですよね。リヴァイヴァル自体が新しいというか」(レイジ)。

「当時のザ・フーをいまの時代に呼んできて音を出したらこうなりました、みたいなところがあるかも。僕らはヴィンテージの機材にこだわってるわけでもないですから、本当にいまの時代に生きる自分たちが鳴らしただけなんですけどね」(ハマ)。

 

PROFILE/OKAMOTO'S

オカモトショウ(ヴォーカル)、オカモトコウキ(ギター)、ハマ・オカモト(ベース)、オカモトレイジ(ドラムス)から成る4人組。2007年に高校の同級生を中心に結成され、新宿を拠点にライヴ活動を開始。2008年にコンピ『Here come the Modernity』に参加。2009年3月にファースト・アルバム『Here are OKAMOTO'S』をリリースして一気に注目を集める。同年6月にハマ・オカモトが加入し、現在の編成に。12月にライヴ会場限定で自主制作盤『Count 1000 EP』を発表。2010年2月に初の全国ツアーを行う。3月にはUSで〈SXSW〉に出演し、全米6都市を回るツアーも敢行。5月26日にニュー・アルバム『10'S』(ARIOLA JAPAN)をリリースしたばかり。

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掲載: 2010年06月18日 14:11

更新: 2010年06月18日 14:12

ソース: bounce 321号 (2010年5月25日発行)

インタヴュー・文/岡村詩野