インタビュー

Namy 『Namy Black』

 

ベッドルームではなく現場で起こる〈黒い波〉は、きっとここから始まる!

 

Namy -A

軽やかなラテンやボサノヴァから、アーバンなソウルまで。クラブ・ミュージックに軸足を置きつつ、あくまで生演奏に特化したサウンドを紡いできたのが、高波由多加を中心とする不定形プロジェクト=Namyだ。彼は2008年から1年ほどの間に3枚ものアルバムを発表。しかし〈現場〉に対する強い思いを持つがゆえ、これまでの作品はイヴェント会場だけで発表してきた。

「クラブ・イヴェントをずっとやってきたんですけど、2003年頃に生のバンドが演奏するイヴェント〈BOSCA〉を海の家なんかを会場にして始めたんですよ。クラブはいまも好きなんですけど、僕は歳を取っても音楽を楽しめる場が作りたくて。そう考えた時に、自然と触れ合えるなかでアコースティックな音楽が聴けたらいいなと思ったんです。その〈BOSCA〉を知ってもらうために、イヴェント自体をパッケージにしたCDを作ろうと思って立ち上げたのがNamyなんです。流通はあえて通さず会場だけで手売りしようと」(高波由多加、プロデューサー:以下同)。

活動の中心はあくまで現場。楽曲制作にも彼はオーガナイザーのような立場で関わっているという。

「〈BOSCA〉を続けるなかで出会ったいろんなミュージシャンにお願いして曲を書いてもらったり、レコーディングに参加してもらったり。僕は〈高波音楽隊〉って呼んでるんですけど、みんなでいっしょに音楽を作っていく感じ。それが本当に楽しいですね」。

そんな草の根レヴェルの活動によって、Namyの名が徐々に浸透するなかリリースされた初の全国流通盤が『Namy Black』だ。本作はこれまでの作品からまんべんなく楽曲をピックアップしたリミックス集。Jazzin'parkが清涼感たっぷりの4つ打ちに仕立て、Shin-Skiはエレクトロ・ハウスとダウンテンポという両極の志向を2曲で打ち出し、Kenichiro Nishiharaはピアノ主体の哀愁ラテン・ハウスを披露……とリミキサー陣がそれぞれの本分を発揮しまくった結果、ハウスを主軸としつつもさまざまなスタイルのダンス・ミュージックが出揃う一枚となった。

「リミックスをお願いするうえで、それぞれのスタンスが被らないほうがいいと思ったんです。僕の場合、音楽はその時の気分で楽しみたいから、いろんなタイプの音をアピールしたかった。それから同世代の方にお願いしたかったというのもあります。若手のいまがんばってる人たちといっしょに新しい波を起こしたいなと」。

流麗なダンス・ビートに裏打ちされた本作は、唯一のアコースティック曲、ニーヨ“Because Of You”のカヴァーで締め括られる。

「この曲を最後に置くことで、Namyの生演奏の世界にも繋がるんじゃないかと。このCDが僕らのイヴェントや、出演しているバンドを知るきっかけになってくれれば嬉しいですね」。

 

▼『Namy Black』に参加したアーティストの作品を紹介。

左から、Jazzin'parkの2009年作『A DAY IN THE LIFE』(philter)、Shin-Skiの2009年作『PLANETARIUM』(OCTAVE)、Kenichiro Nishiharaの2010年作『LIFE』(UNPRIVATE)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年06月25日 19:54

更新: 2010年06月25日 19:55

ソース: bounce 322号 (2010年6月25日発行)

インタヴュー・文/澤田大輔