インタビュー

氷室京介 『“B”ORDERLESS』

  

 「満足感はすごくあります。毎回迷いはありますけど、その迷いを払拭するために生きているわけで」

  オリジナル・アルバムとしては、06年12月にリリースされた
『IN THE MOOD』以来となる『“B”ORDERLESS』。
長年のキャリアの中で研ぎ澄まされ抜いた表現の凄味を徹底的に
体感させられる1枚だ。



「俺がLAに住んで13年くらいになるんですけど、
良い意味で身体に残っている日本人の血と、向こうの文化圏で
生活するようになって身についてきた新しい要素を、
そろそろうまく融合しないといけない。
今までよりもロック・テイストを注入しないといけないということを
意識しながら作ったアルバムですね」
と本人は語っていた。

 

 真骨頂とも言うべきパワフルなサウンドが連発され、燻し銀のブルース・フィーリング、
サイケデリックな浮遊感、精緻なアンサンブルも響かせる本作の聴き処は尽きない。
松井五郎、“BANG THE BEAT”を手がけたSPIN、GLAYのTAKUROによる歌詞が喚起する世界観も、
じっくり味わいたいポイントだ。

 

「TAKURO君と松井さんは全然タイプが違うので、
コントラストがついて面白いアルバムになったと思います。
松井さんは、キュビズムというか、ストーリーは分かりづらくても構わないから、
あらゆる角度から一つのものについて歌って行く。
TAKURO君は一貫して筋が通っている。感情移入しやすいですよね」

 

 現在、氷室京介は年明けまで続く全国ツアーの真っ只中にいる。
全身全霊を注いで楽曲を制作し、ライヴ・パフォーマーとしても最前線に立ち続ける彼が我々に教えてくれるものは、
あまりにも大きい。

 

「満足感はすごくあります。毎回迷いはありますけど、その迷いを払拭するために生きているわけで。
これでやり尽くしたということになるともう次は作れないんでしょうけど、まだ次を作りたいですし。
自分の中で未知のトライをして、それがきちっと形になって最終形で到達点に達している。
そういう意味でも仕上げたという充実感はありますね」

 

誰もが多かれ少なかれ閉塞感を抱えている昨今だと思うが、そこに立ち向かうための心意気を本作『“B”ORDERLESS』、
そして<氷室京介>という存在の全てが教えてくれている気がする。

 

 ■SONG LIST……『“B”ORDERLESS』

01. My Name is "TABOO"
02. PARACHUTE
03. Rock'n' Roll Suicide
04. Doppelganger
05. The Distance After Midnight
06. 忘れてゆくには美し過ぎる…
07. Sarracenia
08. Time for Miracles
09. Never Cry Wolf
10. Traumatic Erotics
11. BANG THE BEAT

初回限定盤 【Bonus Tracks】
12.Across The Time
13.Safe And Sound

 

■ PROFILE…氷室京介(ひむろ きょうすけ)

日本が誇るロック・ヴォーカリスト。
オリジナリティーを追求し、ジャパニーズ・ロック・シーン全体を牽引し続けている存在。
待望のアルバムをリリースし、全国40箇所以上を巡る全国ツアー中。

 
記事内容:TOWER 2010/9/20号より掲載

カテゴリ : HOT PICKS

掲載: 2010年09月17日 11:00

ソース: 2010/09/20

田中 大