Jesse Harris
ダイレクトで、ナチュラルで、そのままの感じを
日本でもすっかり馴染みの人だ。おおはた雄一やポート・オブ・ノーツのプロデュースにかかわるばかりか、彼の曲名をそのまま冠した野外フェスティバル、ウォッチング・ザ・スカイもこの春2回目を迎えた。もちろん、そこでも気負いのない演奏でファンを魅了したが、そのジェシー・ハリスが、フェスティバルについてこう話す。
「ぼくの歌を離れて一人歩きし始めているので、このまま続いて欲しいね。いずれ、ぼくの歌を思い出さないくらいの存在なってくれればいいんだけど」と。
今年は、そのフェスティバルに話題のジョー・ヘンリーも出演した。「彼ならではのアイデンティティを持っているのがすごい。自分が何処からやってきて、どういう音楽をどう感じながらやっているのか、一瞬にしてわからせる、そういうはっきりした個性を持っている」と語り、鋭い観察力をのぞかせる。だからだろう、ジェシーへのプロデュースのオファーは絶えることがない。おおはた雄一もその一人だが、「雄一はとてもリラックスできる人だ。音楽はもちろんだが、音楽に対する精神も素晴らしい。伝えたいことをより穏やかに伝える術を彼から学んだような気がするよ」。
そのジェシー・ハリスの新作『スルー・ザ・ナイト』は、音楽という行為に対するこの人の熱意や誠意がとても気持ちよく弾むアルバムだ。「ダイレクトで、ナチュラルで、自分たちが演奏している、そのままの感じを伝えたかったんだ」。普段なら、ニューヨークでの録音も交えるところを、バハマで14日間一気に作業を進めたせいもあるらしい。「集中してその瞬間を凝縮することができたからね」。
「友人にナイロン弦のギターを弾いてもらい、ブラジルらしさを強調した」というように、ブラジル音楽への思いをストレートに託した曲も目立つ。ただし、創意を欠かさない人だけあって、多彩なリズムを歌に機能させながら、例えば、夜にだって、光があたる昼間と同じように、あるいはそれ以上に大切な物語が潜んでいる、そういう思いを歌に紡いでいく。
キーワードは、〈夜〉に〈水〉。「その通りだね、それに夢を加えてもらえるといい。意図してそういう言葉を集めた訳じゃないけど、たまたまそうなってもそれを敢えて削ったり、変えるのではなくて、自然にでてきたものなら、そのままにしておこうと思ったんだ」。
いつもは、インストゥルメンタル・ナンバーがアルバムの流れに絶妙なアクセントをもたらすが、今回に限ってはインストの楽曲が一曲もない。不思議だなと思って訊ねると、悪戯っぽい笑みと一緒にこんな答えが返ってきた。「実はね、インストのアルバムを別に作るんだ。ジョン・ゾーンの【ザディック】というレーベルでね。今回も2曲ほどインストがあって、入れようかと思ったんだけど、そうだ、あっちに回そうと」。
『「スルー・ザ・ナイト」ジャパンツアー2010』
10/12(火)渋谷・クラブクアトロ
10/13(水)京都・磔磔
10/14(木)富山・フォルツァ総曲輪
10/15(金)広島・クラブクアトロ
10/16(土)福岡・ROOMS
http://www.plankton.co.jp