Victor Deme
「アフリカン・フェスタ2010」で初来日!
ブルキナファソと聞いて、地図上でその位置を指せる日本人はごく僅かだろう。80年代以降に西アフリカはセネガルのユッスー・ンドウールやマリのサリフ・ケイタらの世界的なスターを輩出してきたが、この内陸部の国からも遅ればせながら注目のアーティストが登場した。48才にして『ブルキナファソからの黄昏アフロ・ブルース』でアルバム・デビューを果たし、たちまち欧州で大評判を呼んだヴィクター・デメである。6月に「アフリカン・フェスタ2010」出演のために初来日を果たした。
彼のルーツはマンディンゴ族で、祖母がグリオだ。
「グリオには民族の伝承を語る役割もありますが、祖母は結婚式や洗礼式で歌うことが多かった。新婚夫婦の前で歌うときは、助言をこめたりするんですよ。新婦に向かって、今まではクラブへ行ったりして好きなように楽しんでいたけど、これからは妻としての責任があるのだから、夫や彼の両親を立てて彼らに従うのよ、といったことを歌にこめるんです。そういった歌に影響を受けて、私も歌詞にメッセージをこめるようになったんですね」。
ヴィクターの音楽にはブルキナの伝統音楽、ラテン音楽、そしてブルーズ~R&Bという3つの影響が強く感じられる。そこで、どんな音楽を聴いてきたかを問うと、「ソリ・カンジャ・クヤテ(ギニア)やカセ・マディ・ジャバテ(マリ)」とまず隣国の人気歌手の名前を挙げ、さらに「ジェイムズ・ブラウン、オーティス(・レディング)、ジョニー・アリディ(笑)、ナイジェリアのオフェゲ、もちろんフェラ(・クティ)」と納得の答が返ってきた。「もちろん伝統を根底に据えているんですが、ミュージシャンは経験のないことにも常に挑戦して前進しなければなりません。それでブルーズなども取り入れているんですよ」。
30年間の苦労の末、05年にマネジャーと、07年には彼のためにレーベルを設立する仏人ジャーナリストとの出会いがあって、初のアルバムの制作にとりかかった。
「あの頃は世の中に対して言いたいことがお腹の中にいっぱい詰まっていました。例えば<子供に何をした?>だったら、ブルキナでは法律で禁止されている中絶を勝手にしたり、生後間もない子供を捨てたり・・・そういった現実を目の当たりにして出来た曲だし、〈軽蔑〉は僕や友人たちが貧しさのせいで蔑まされてきたことへの憤りからです。喉元まで出かかっていたことが一気に出たんですよ」。
ヴィクターの曲には母親についての歌が多い。彼自身の母親はかなり前に亡くなったそうだが、そこには女性への深い尊敬の念がある。
「女性が妊娠して9ヶ月身ごもっていると、腰も痛くなるし、頭も痛くなる。すごく大変なんですね。母は出産のときに生死の間をさまよう経験もしました。僕らは女性に対してはもっと敬意を払わなくちゃいけないんじゃないか。そういう気持ちで作っているんですよ」
ヴィクター・デメ来日公演
10/11(月・祝)東京・日比谷野外大音楽堂「World Beat2010」
10/12(火) 東京日仏学院 ラ・ブラスリー
http://www.plankton.co.jp/