インタビュー

Turn On The Sunlight

Photo by Ernesto Potdevin Jr.

カルロス・ニーニョが踏み込む美しい新境地

ロサンジェルス出身のカルロス・ニーニョは、ビルド・アン・アークやライフ・フォース・トリオなどスピリチュアル・ジャズを土台としたプロジェクト、またはJ・ディラのトラックをオーケストラ用にアレンジしたミゲル・アットウッド・ファーガソンとの『Suite For Ma Dukes』など、数々のプロジェクトのプロデューサーとして知られているが、そんな彼が打ち出した新機軸がフォークとエレクトロニクスを融合させた、ターン・オン・ザ・サンライト(以下TOTS)というグループだ。ニューヨーク在住のギター兼マルチ楽器奏者のジェシー・ピーターソンと結成したこのデュオは、ブライアン・イーノやジョン・フェイヒーの影響を取り入れ、アコースティック・ギターに焦点を当てたスモーキーでスピリチュアルなサウンドだ。

「ジェシーが2004年にロサンジェルスに住んでいる頃に出会ったんだ。彼のアコースティック・ギターの演奏に魅了されて、彼のソロ・アルバムをプロデュースしようと思ったんだけど、その作業をしているうちに、自然とコラボレーションをするようになっていたんだ」。ジェシーは子供の頃からフォーク・ミュージックに親しんでいるミュージシャンだが、ヒップホップとジャズの造詣が深い深いカルロスとの不思議な化学反応から、独特のサウンドが生まれた。「 僕とジェシーの間に素晴らしいケミストリーとアルケミー(錬金術、魔法)があるんだよ。このプロジェクトは、ジェシーのギター演奏が中心となっていて、ジョン・フェイヒー、Takomaレコーズ、ニール・ヤング、デヴィッド・クロスビー、ドノヴァン、バート・ジャンシュなどに影響されている。僕が今まで手掛けたプロジェクトの中で、初めてギター、オルガン、キーボード、そして声を中心とした作品だったけど、新たな発見も多かった」

TOTSのユニークなグループ名には、〈光を招き入れる〉というメッセージが込められているが、ビーチ・ボーイズを思わせるボーカル・ハーモニーと、流麗なギター・サウンドはまさにグループ名を反映させた超越的なサウンドだ。また、カルロスが初めてボーカリストを務めたのも特筆すべき点だ。「僕が歌うようになったのは、自然の進化の過程だと思うんだ。 歌詞の主なテーマは、愛、太陽、そして〈心を開く〉ことだよ」

今のロサンジェルスはフライング・ロータスを始めとするビートメイカーが注目されているが、TOTSや、カルロスがプロデュースしたフォーク・シンガーであるミア・ドイ・トッドやギャビー・ヘルナンデスは、無意識に新たなLAのフォーク・ムーヴメントを形成しているのかもしれない。

「フォークというのは、人々のための音楽を意味しているんだ。僕らの音楽がフォーク・ムーブメントの一部なのか分からないけど、大自然にインスパイアされた、ソウルフルな音楽を作ろうとしている。ジャンルやスタイルは関係ないよ」

TOTSは、失速気味な現代の音楽シーンに、ひとすじの光を差し込ませるに違いない。

『Turn On The Sunlight  来日スケジュール』

2010/10/10(日)朝霧JAM
10/11 (月・祝) CLUB METRO(京都)
10/12(火)旧グッゲンハイム邸(神戸)
10/13(水)PINE BROOKLYN(大阪)
10/15(金)UNIT(東京)
10/17(日)さっぽろばんけいスキー場センターロッジ(札幌)
http://corde.co.jp/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年10月08日 14:22

更新: 2010年10月08日 14:39

ソース: intoxicate vol.87 (2010年8月20日発行)

interview & text : バルーチャ・ハシム