インタビュー

雅-MIYAVI- 『WHAT'S MY NAME?』

 

雅-MIYAVI-とは果たして何者か。ヴィジュアル系? ド派手な技巧派のギタリスト?——そんな数多のイメージを良い意味で覆す、圧倒的な新作を彼はドロップした。その名もズバリ『WHAT'S MY NAME?』。レーベルを移籍、心機一転して制作され、ヴォーカル/ギターの雅-MIYAVI-と、日本が世界に誇るポスト・ハードコア・バンドである54-71のドラマー=BOBOの2人というミニマムな編成で誕生した。まるで真剣による斬り合いのような、緊張感が漲るロック・アルバムである。

「ワールド・ツアーを初めて回ったのが2008年。その時はKAVKI BOIZという総合エンターテイメント集団やDJ、ラップ、タップ、和太鼓、ボディーペインティングなんかをやっているさまざまなパフォーマーといっしょに、マテリアルは欧米でも日本人の解釈によって生み出された独自の音楽を打ち出してみようというコンセプトで回りました。日本人として生まれたからには、日本人として打ち出したかった。結果、KAVKI BOIZは世界中でものすごい大きな反響を得ることができたけど、その後で自分を問いただしたんです。俺個人では世界に対して何がやれるんだろうって。そこで2009年に独立して、スタッフもレーベルも全部変えて、同じパースペクティヴを持ったチームを作った。そして改めて雅-MIYAVI-という音楽家と向き合った時に、何が必要で何が必要じゃないかを考え抜いた結果、ギターとビート、そしてシャウトが残ったんです」。

スラップでギターをブッ叩き、掻き鳴らす独自の奏法は、もはや一人多重奏。低音から高音まで、ニュアンスの違うサウンドが同時に鳴らされる快感はまるでイリュージョンだ。そこにタイトかつダイナミックなBOBOのドラムが衝突し、熾烈にスパーク。ジャンルやシーンを超越した、音楽家としての彼の凄みがダイレクトに伝わってくる。

「ヴィジュアル系というカルチャーからは多大な影響を受けているし、リスペクトもしています。ただ音楽的なシーンとして考えると、俺には窮屈だった。俺はやりたいことをやる。それを突き詰めた形が、まさにこの『WHAT'S MY NAME?』。〈お前は何なんだ?〉ということ。スラップでギターを弾くのは、特にテクニカルな側面を強調したいからではないんです。音符を知識だけで鳴らさずに、感情と直結させて鳴らす。音楽はそうあるべきだと思っているから」。

本作は、共同プロデューサーとしてストロークスや8ottoの作品で名を馳せたヨシオカトシカズを招いて制作されている。BOBOとの出会いもヨシオカの導きによるものだったのだとか。

「とにかく必要だったのは〈世界の匂いを知っている人間〉で、日本の窮屈な慣習や常識に因われない人物。そこで白羽の矢を立てたのがトシ(ヨシオカ)だったんです。その彼が、俺とがっぷり四つで戦えるドラマーとしてBOBOを紹介してくれた。そして今回のアルバムを作るチームが出来上がったんです」。

常に世界照準で物事を捉える。そんな彼が考えたこのアルバム最大の武器は、日本人ならではの感性による〈間〉だと語る。

「茶道や日本舞踊などの〈間〉の空気感だけは、絶対に日本人にしか出せない。それが俺のオリジナリティーにも直結すると思ったんです。だからどれだけ隙間をカッコ良く聴かせるかを追求しました。あとは、俺にしか出せないマッドネスでフリーキーなスタイルと、ディティールへのこだわり。それが、日本人である雅-MIYAVI-が世界を相手に戦うための武器です。俺は日本でも海外でも〈雅-MIYAVI-が好きだ〉と言って〈あっそ〉で済まされない、〈俺は聴かないけど、あいつ良いよね〉と言ってもらえる、そんな音楽家になりたいです。それがきっと、俺のファンにとっても誇りになるはずだから」。

類稀なエンターテイナーにして才能溢れる若き音楽家・雅-MIYAVI-の挑戦は、リスタートを切った本作からふたたび加熱することになりそうだ。

 

PROFILE/雅-MIYAVI-

81年、兵庫出身のシンガー/ギタリスト。99年の上京後、バンド活動を経て2002年よりソロでのキャリアをスタート。初作『雅楽-gagaku-』をはじめインディーで2枚のアルバムを残す。同年にメジャー・デビューし、2005年に『雅-miyavizm-主義』を発表。2006年に『MYV☆POPS』をリリース後、LAへ留学。翌2007年に帰国して活動を再開し、KAVKI BOIZを結成。コンスタントに作品を発表するなか、YOSHIKI率いるS.K.I.N.への参加も話題に。2008年には初の海外ツアーを敢行。2009年に独立、レーベルも移籍。今年は海外/日本ツアーやグッド・シャーロットとのコラボなども注目を集め、このたびニュー・アルバム『WHAT'S MY NAME?』(EMI Music Japan)をリリースしたばかり。

 

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掲載: 2010年10月28日 14:32

更新: 2010年10月28日 14:32

ソース: bounce 326号 (2010年10月25日発行)

インタヴュー・文/冨田明宏