インタビュー

PONTIACS 『GALAXY HEAD MEETING』

 

 

浅井健一、照井利幸、有松益男。3人の名前を並べるだけで、火花散る激しい音のバトルと背負ってきた濃密な生き様さえ見えてくるような、すごいメンツだ。すでにこの夏はいくつかのフェスでライヴを披露し、〈馴らし〉の時期を過ぎてアクセルを思い切り踏み込みはじめたスーパー・バンド、PONTIACS。その結成は、浅井と照井の何気ない会話から始まったという。

「ブランキーを解散してからはたまに会うぐらいだったんだけど、照ちゃんとサーフィン始めてからは、行く途中でいっしょに車に乗るじゃん? 2時間以上ずっと話してるからさ、初めはサーフィンの話ばっかりだったんだけど、だんだん音楽の話になっていってさ。照ちゃん、すごく静かな音楽やってるじゃん、いま。その時、俺もちょうど『SHELLBY』っていう静かな音楽のアルバムを作ってて、2人ともえらい静かな曲やってるねっていうところから、激しい世界にはもう行かないの?っていう問いを投げかけてみたら、もしもそういう相手がおったらやりたいみたいなことを言っとってさ。じゃあ冒険してみようぜってことにになって、そこから始まったけどね」(浅井健一:以下同)。

浅井のギターと照井のベースの相性の良さについては、いまさら言うまでもない。恐ろしく太いメロディックな重低音ベースに煽られ、浅井は最近のソロ作の繊細なタッチとは一転して、荒ぶる魂の咆哮のようなギターを弾きまくっている。それを、重い車体を巨大な排気量のエンジンで加速させていくような、有松の豪放なドラムがどっしりと支える。

「照ちゃんは真正面から取り組んでくるから、こっちもすごい力でやらないといかんっていう気持ちになってくるんだよね。姿勢が正しくなる感じかな。照ちゃんはみんなをピリッとさせるオーラを持っとるもんだから、よく言えば引き締まるというか、ピリピリしすぎてリラックスできない面もあるけど(苦笑)。益男とやるのは初めてだけど、すごくしっかりしたテクニックと気持ちのいいリズム感を持ってるから、いいね。パワフルだよね」。

骨格となる歌詞の世界観、メロディーの展開、歌の表現などは常に変わらぬ浅井健一のオリジナルだが、演奏面で3人は完全に対等だ。レコーディングは10日間ほど、スタジオはGO-GO KING RECORDERS/studio、エンジニアは加納直喜。驚くほど生々しい音の粒立ちと音圧の強さが、3人の叩き出すサウンドとぴったり合っている。

「コンソールがAPIっていうオールドのコンソールで、コンピューターで録音するんじゃなくて、24chのテープで録ってるから、音がいつもと違う。こだわりがあるスタジオで、すごく良かったな」。

3人のうち2人が顔を揃えている以上、どうしてもブランキー・ジェット・シティを連想してしまう人は多いだろう。バンド・サウンドとしてはかなり異なるのだが、リスナーとしての昂揚感は近いとも言える。ブランキーみたいな音をもう一回やりたい意識はあるか?と、あえて訊いてみた。

「もちろんブランキーみたいな音は……いや、あんまり何も考えてないね(笑)。ブランキーを再結成するつもりはないし、新しい曲で新しい世界をまた作ろうっていうこと。人間は新しい冒険に出たくなるものだから。(中村)達也のドラムはすごいし、人間的にも大好きだし、大事な友達だと思ってる。あのドラムは誰にも真似できない、世界でも貴重なドラマーだと思う」。

11月には東名阪でワンマンを、2011年1月からは全国ツアーがスタート。「このバンドはいつまで続ける?」と不躾に訊くと、浅井は「ちょっとまだ読めないね。その時の気分というか、決めてない」とあっさり答える。限界をぶち破る強力なハイテンションを必要とするバンドだけに、一歩先の未来はわからないのだろう。だからこそ、PONTIACSはいま観て、いま聴いておかなければいけないのだ。

 

PROFILE/PONTIACS

浅井健一(ヴォーカル/ギター)と照井利幸(ベース)、元BACK DROP BOMBの有松益男(ドラムス)から成る3人組。今年の7月9日に行われた渋谷・club asiaでのステージを皮切りにライヴ活動をスタートさせ、〈フジロック〉〈SWEET LOVE SHOWER〉〈SUNSET LIVE〉など数々の夏フェスにも出演、大きな反響を呼ぶ。初音源となった2曲入りCD『GALAXY HEAD MEETING/SHINJUKU』がライヴ会場限定だったことで全国リリースが待たれていたが、11月3日にファースト・アルバム『GALAXY HEAD MEETING』(CRAZY MAD JOHNSON/Sexy Stones)をリリース。来年1月からは、アルバムを引っ提げての全国ツアーも開始される。

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掲載: 2010年11月19日 14:06

更新: 2010年11月19日 14:06

ソース: bounce 326号 (2010年10月25日発行)

インタヴュー・文/宮本英夫