インタビュー

幸田浩子

「そろそろ男性に恋する役も演じたいです」

NHK FMの「気ままにクラシック」でパーソナリティーを務める二期会所属のソプラノ歌手、幸田浩子が日本コロムビアから4枚目のCD『天使の糧』をリリースした。アルバム名となったフランクの名作に始まり、シューベルトとサン=サーンスの《アヴェ・マリア》、浅田真央(スケート)の次期シーズンのフリー曲に決まったリストの《愛の夢》など盛りだくさんの内容をグルーバーの《聖しこの夜》で締める14曲。第2作『カリヨン』でも共演した新イタリア合奏団とも気心通じ、親しみをこめた語り口には磨きがかかった。

──コロムビアとも長い付き合いになりました。

「いま1番、私が録音したいものをそのまま実現して下さるのが素晴らしい!デビュー盤のモーツァルトも後で考えれば、かなりマニアックな選曲でした。次に珠玉の小品集の『カリヨン』が来て、3枚目には再び直球のオペラ・アリア。いつもCDのために新しい曲をさらうのではなく、長く歌い込み、自分の中で育ててきた作品を中心に制作できるのが、ありがたいです。今回はオペラと並び、ふだんの演奏活動の両輪と考えている宗教曲をベースに選びました。新イタリア合奏団はもちろん、フルートのクラウディオ・モンタフィアさん、ハープのダヴィデ・ブラーニさんも以前の録音に加わっていらした。トランペットのパオロ・バッキンさんとはJ.S.バッハの《カンタータ51》をスロヴァキアで一緒に演奏しています。いずれも新録音のための寄せ集めではなく、共演を積み重ねてきたメンバー。バロック時代の作曲家マルチェッロの末裔が所有するヴィラでの録音も2度目。ヴェネチアとパドヴァの間にある素晴らしい場所。すべて〈勝手知ったる〉だったのが幸いでした」

──聴き手のそばで、そっと語りかけるような感触には、放送の蓄積も生きています?

「全国津々浦々、こんなにもクラシック音楽の大好きな方がおられるのを放送や公開録音を通じて知り、大きなパワーを頂いています。歌以外のジャンルにも少し詳しくなったことでも、表現の幅が広がったのかもしれません」

──いま歌いたい役、今後の予定など。

「『ナクソス島のアリアドネ』のツェルビネッタ、『ばらの騎士』のゾフィーとも恋人役はメゾ・ソプラノの男装。そろそろ本物の男性を愛する役を演じたいです。第1希望は『リゴレット』のジルダ。堀内康雄さん(バリトン)のお父さん役と組めたら最高!後は『ハムレット』のオフィーリアを本物の水をふんだんに使ったステージで歌いたい。『ホフマン物語』ではオランピアだけでなく、アントニアとジュリエッタを加えた3役を1人で歌える日を夢見ます。アレクサンドル・ラザレフさん指揮の日本フィルとは来年3月、香港でグリエールの《コロラトゥーラ協奏曲》を共演します。次はぜひウィーンの音楽、オペレッタのアリアやJ・シュトラウスのワルツ《春の声》などを録音したいと願っています」

 『新イタリア合奏団クリスマスコンサート』
12/23(木・祝) 東京オペラシティ
『第54回NHKニューイヤー・オペラ・コンサート』1/3(月)NHKホール
『ニューイヤー・コンサート2011』1/5(水)水戸芸術館コンサートホールATM
『第80回ニューイヤー・ステップ・コンサート』1/6(土)オーチャードホール
『幸田浩子ソプラノリサイタル』1/20(木)佐賀市文化センター
http://www.nikikai21.net/pickup/hiroko-kouda_int.html

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年12月21日 15:33

更新: 2010年12月21日 15:39

ソース: intoxicate vol.89 (2010年12月20日発行)

interview & text : 池田卓夫(ジャーナリスト)