Roberta Sá & Pedro Luis
ブラジル音楽界を牽引する夫婦が揃って来日
今、ブラジルで大人気の歌手ホベルタ・サーが、夫であり、サンバ打楽器軍団モノブロコを率いて5月に来日したばかりのペドロ・ルイスと共に来日した。ペドロはそのモノブロコで、ブラジルで国民的人気を誇るシンガー・ソングライター、チン・マイアの曲をいくつもレパートリーにしているが、ペドロがホベルタに書いた曲《ノ・ブラゼイロ》にも、チンの名が登場する。
「モノブロコはダンスホールでの演奏が多いからチン・マイアはレパートリーの必須なんだ。そして彼は偉大な作曲家でもあると同時に、歌手としても個性的な人。彼が歌うことでどんな歌でも彼独特のものになったからね。とても尊敬している」(ペドロ・ルイス)
チン・マイアの音楽の基本はソウル・ミュージックだが、ボサノヴァから北東部の音楽まで、雑多な音楽を融合させていたのも大きな魅力だ。ホベルタの音楽もまた、故郷でもある北東部のさまざまな音楽、現在彼女が暮らすリオのサンバなど、いろいろな音楽が溶け込んでいる。
「サンバの印象は強いけれど、私の音楽にはフォホーやマラカトゥなど北東部のさまざまな音楽が溶け込んでいます。フォホーは大好き。子供の頃いつも踊っていたわ。ブラジルという国自体、いろんな文化のミックスした国だけど、中でもリオは特別。国外からきた人や国内のいろいろな場所からきた人が交差する場所だから、ここではいろんな音楽が交じり合うのかも」(ホベルタ・サー)
彼女の新作『クアンド・オ・カント・エ・ヘザ』は北東部、バイーア州の作家ホッキ・フェヘイラ曲集。歌の舞台の多くはバイーアだが、ホベルタが歌うと彼女の故郷ナタウの海の景色にも見えてくる。
「バイーアとナタウは離れているけど、同じ北東部にあるから共通する文化も多いの。だから海の景色や食べ物のこととか、小さいころに見たナタウの風景を思い出しながら歌っていました」(ホベルタ)
海を思わせるのは歌詞や歌声からだけではない。このアルバム、時には先鋭的な演奏でも知られるインスト・バンド、トリオ・マデイラ・ブラジルとの共演作品なのだが、バンドの演奏自体、聴いているとまるで波間に浮かんでいるような感覚になってくる。
「まさに、そういう感じで演奏したり、歌ったりしていました。ホッキの歌詞から私が感じたことをそのままメロディに出したかったんです。私は歌手だから、歌をもらったらその歌を自分ならではの感覚で表現して自分にとって意味のあるものにしていかなければなりません。歌詞をもらったときに抱いたイメージを大事にしたら、結果的にそうなったということなんだけど」(ホベルタ)
そんな彼らの演奏と、全てを包み込んでくれそうな、暖かさと優しさを湛えたホベルタの魅力的な歌声が運んでくる、エキゾで、どこか懐かしくもある海の景色に、あなたも身を委ねてみませんか?