インタビュー

Pay money To my Pain 『Remember the name』

  

 もしも世の中がこの音に共鳴しないのであれば、僕はこの音ではなく世の中のほうを捨ててしまいたい

自分たちの抱く理想や憧憬と温度差のない音楽を、
常に吐き出し続けてきたPay money To my Pain。
しかし、これほどまでに彼ら自身の体温や息づかいが
リアルに感じられる作品が提示されたのは、
実は初めてのことではないだろうか。

 

 第3作目のフル・アルバムにあたるこの『Remember the name』には、
過去とは比べものにならないくらい振り幅の広い楽曲たちがぎっしりと詰め込まれている。
ヘヴィでブルータルな轟音と、マグマが噴き出すような感情吐露を身上とする4人組――
そんなイメージでこのバンドを捉えてきた人たちは、これら全14曲に触れている間に
幾度も耳を疑うことになるかもしれない。が、彼らとて常に肩をいからせ、
血を沸騰させながらわめきたてているわけではないし、均一なバランスで
プロダクトを製造し続ける機械のような成り立ちをしているわけでもない。
喜怒哀楽も、愛も憎しみも、強靭さばかりではなく脆弱さも、白と黒ばかりではない
曖昧なグラデーションの感情をも持ち合わせた、生身の人間たちの集合体。
それが、Pay money To my Painなのである。

 

 このアルバムには、間違いなく進化と深化の双方を遂げたバンドの現状が封じ込められている。
同時に、これまで部分的に隠されていたメンバーたちの素顔がすべてさらけ出された状態にある
という言い方も可能だろう。
それは、このバンドが彼らを束縛するのではなく解放するものだということが、
彼ら自身のなかでより深く理解されることになったからではないだろうか。少なくとも僕は、そう感じずにいられない。
もはや<欧米の今様ラウド・ロックと比べて遜色のない1枚>といった陳腐な謳い文句で
この音楽を形容することはできないし、<どこに出しても恥ずかしくない>なんて言葉すらも彼らに対して
失礼だという気がする。恥ずかしくないのではなく、誇るべき日本生まれのロックの現実。それが、ここにある。
もしも世の中がこの音に共鳴しないのであれば、僕はこの音ではなく世の中のほうを捨ててしまいたい。

 

  

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SONG LIST
1.This life
02.Weight of my pride
03.Drive
04.Relive
05.Deprogrammer
06.13 monsters
07.Atheist
08.Wallow in self pity
09.Greed (通常盤ボーナス・トラック)
10.Hourglass
11.In the blink of an eye
12.Gift
13.Pictures
14.dilemma 

 

■ PROFILE…Pay money To my Pain(ペイ・マネー・トゥ・マイ・ペイン)

04年結成。06年にEP『Drop of INK』でデビュー。
Beyond the Heavinessなスケール感の唯一無二の音像と世界観!!
もがきながら前へ進み続ける希望の詩(うた)をヴォーカル・Kが唄う。

 

   
記事内容:TOWER 2011/1/20号より掲載

カテゴリ : HOT PICKS

掲載: 2011年01月20日 12:00

ソース: 2011/1/20

増田勇一