François Leleux
「シュトラウスだけで1枚、どうしても作りたかった」
©Uwe Arens
フランス人オーボエ奏者ながら、ドイツのミュンヘンに住んで17年になるというフランソワ・ルルーがミュンヘンゆかりの作曲家リヒャルト・シュトラウスの作品だけで1枚のアルバムを完成した。共演者も全員、ルルーの指名で集まり、密度の濃い仕上がりである。
──ドイツ音楽に挑むとしても、R・シュトラウス特集とは思い切った。
「ほぼ同世代のオーボエ奏者にベルリン・フィル首席のアルブレヒト・マイヤーがいるが、過去30年ほどの間にドイツ人奏者がフランス奏法、フランス人奏者がドイツ奏法をそれぞれ採り入れ、非常にブレンドされた状況となった。私もモーツァルトの次に何を手がけようかと考えたとき、ごく自然にR・シュトラウスの協奏曲が浮かんだ。最初はロマン派の忘れられた作曲家で、バッハ家を思わせる大きな音楽家ファミリーの一員だったルートヴィヒ・シュンケ(1810-34)の作品を組み合わせようとも思ったが、余りにも知られていないので断念。代わりにシュトラウス作品だけで埋める案を採用した。《オーボエ協奏曲》は81歳の老作曲家による傑作。対する《13管楽器のためのセレナード》は18歳、《13管楽器のための組曲》は20歳の作品である。オーボエのスペシャリストに限らず、一般の聴き手にとってもシュトラウスの生涯を往来し、自由に楽しめるはずだ」
──確かに《サロメ》や《エレクトラ》の爆発的な音響ではなく、初期の《ヴァイオリン・ソナタ》や歌劇《カプリッチョ》を思わせる端正な響きには、統一感が備わっている。
「より古典的で透明感のあるシュトラウスが、静かな叙情で語りかける。オペラのオーケストラのオーボエ奏者として、《カプリッチョ》以外の主要な歌劇を演奏した経験に照らせば、シュトラウスの演奏には洗練が必要だ。《ばらの騎士》《影のない女》でも、トランスパレントな響きを心がけ、様々な音の線をくっきりと浮かび上がらせなければならない」
──協奏曲のオーケストラにも言えることでは。
「ダニエル・ハーディング指揮スウェーデン放送交響楽団と共演し、ライヴで収録する案は私からソニーに提案した。若い世代に多くの優れた指揮者が台頭する中、ハーディングは間違いなく素晴らしいシュトラウスの解釈者だ。とてもよい共演を収められたが、ハーディングとの最初の打ち合わせには驚かされた。場所はストックホルムのパブ。ハーディングは学生オーケストラを指揮した後、学生たちとサッカーを観戦した流れで現れた。パブの凄い喧噪の中で何度も話が中断、心配をしていたら、翌日のリハーサルで私の要求はすべて実現されていた! 一方、室内楽の共演者であるアンサンブル・パリ=バスティーユの面々とは26年前のパリで一緒に学び、20年前からアンサンブルを続けている。ミュンヘンでの録音はもちろん、和気あいあいだったよ」