インタビュー

aie 『hikarika』

 

自分たちの向かう先に光を当て、進んで変化を選んだ彼ら。自他共に認める最高傑作が誕生です!

 

 

エモやハードコアを基盤とした、祝祭感のある独自のサウンドで人気を集めてきた5人組のaieが、ニュー・アルバム『hikarika』で大きく飛躍した。前作『BOX』まで英語だった歌詞は日本語へと変わり、スケール感や演奏のエッジはそのままに、歌を軸としたポップな作風へと華麗なる転身を遂げているのだ。その背景には、変化に対する明確なモチヴェーションがあった。

「メンバーとスタッフも含めてミーティングをして、やっぱり日本語のほうが幅広い人たちに聴いてもらえるんじゃないかって思ったんです。英語でやってたバンドが日本語になった瞬間って、結構〈大丈夫か?〉ってなるじゃないですか? でもaieならそれを覆せると思ったんですよね。リスナー側に歩み寄ったつもりではあったんですけど、結果的には俺らの本質が見えたというか、いままででいちばんいいアルバムができたと思ってます」(大屋努、ヴォーカル/ギター:以下同)。

aieの出身地である千葉県柏市と言えば、KCHC(KASHIWA CITY HARDCORE)と呼ばれる数多くのバンドを輩出してきたインディー・シーンの聖地である。しかし、彼らはそのシーンを支えている偉大なる先輩たちとはあえて別の道を選んだ。

「俺のなかではメジャーよりインディーに格好良いバンドが多いイメージがあるんです。AS MEIASとかZは俺にとって高校生からのヒーローだし、kamomekamomeとか柏の先輩たちもインディーでがんばってる。じゃあそういうところはあの方たちに任せて、自分たちはインディー・シーンとは違うところでがんばってみようって思ったんです」。

サウンド面では一発録りの採用に加え、シガー・ロスのファンだという海老原勉(キーボード)による演奏アプローチの変化が大きいように思う。ピアノやストリングス、トランペットといった音色が前面に出ることで、開放感のあるポップな印象がより強まっているのだ。それは徹底的に〈光〉という言葉を用いた歌詞の世界観とも確かにリンクしている。

「エモって寂しさとか切なさが感じられる音楽で、それが好きだったんですけど、でもそれだけじゃなくて幸せな感じを音に出したりもしたいなって。光って普遍的で、誰もが持ってるものだと思うんです。その光をいろんなものに例えることで、より多くの人に共感してもらえるんじゃないかと。僕のなかでは、音楽に対する自分の姿勢として書いてる部分も大きいですね」。

タイトルの『hikarika』とは、〈光輝く様〉を表す古語なのだという。光に満ちた音楽を手に入れたaieは、エモやハードコアといったシーンだけでなくインディー・シーン全体にとっての灯台として、より開かれた地平を照らしていくのだ。

 

▼aieの作品を紹介。

左から、2008年のEP『sequel』、同年のフル・アルバム『BOX』(共にPヴァイン)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年03月11日 13:55

更新: 2011年03月11日 13:55

ソース: bounce 329号 (2011年2月25日発行)

インタヴュー・文/金子厚武